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2007年6月22日(金曜日)

膀胱炎の薬

 薬局で日頃受けるご相談で目立つものに、「膀胱炎の薬を。」という声がよくあり
ます。
膀胱炎は、一度なってしまうと、体力の落ちたときなどに繰り返す方が多く、以前は
市販
薬で有効なものが販売されていたこともあり、同じものを求めて来られる方がいらっ
しゃ
います。
 ところが平成17年 4月の薬事法改正により、それらの薬は、医師等の処方箋が必要
な薬
に変更になってしまったため、一般の薬局では入手できなくなってしまっています。
 お問い合わせの多い事項であるため、今回は膀胱炎の治療薬についてご紹介しま
す。

■ 膀胱炎とは

 膀胱とは、内面がやわらかい粘膜状の袋で、尿を貯蔵している器官です。膀胱炎と
は、
膀胱の中に大腸菌やブドウ球菌などの細菌が、何らかの原因で侵入し、繁殖すること
によ
り炎症が起こる病気です。通常、膀胱の中に貯められる尿の中にも、少量の細菌がい
ます
が、この細菌が異常に繁殖することによっても膀胱炎になります。

 膀胱には細菌に対する抵抗力がありますが、病気をした後や、疲労が蓄積している
など、
抵抗力の落ちているときに感染しやすくなります。特に女性は、尿道が男性に比べて
短か
く、性器や肛門が近いこともあり、発病しやすいと言われています。また、妊娠した
状態
では、膀胱を空にしにくくなるため、妊婦も注意が必要です。

 膀胱炎の症状としては、突然、排尿後に痛みを感じるようになったり、排尿の回数
が極
端に多くなり、残尿感を感じたり、血尿が出たりするようになります。また、下腹部
に違
和感や痛みを感じる人も多いようです。

 早めに治療をしないと、高熱が出たり、炎症が腎臓に拡がって腎盂腎炎になること
もあ
るので、注意が必要です。

■ 膀胱炎の治療

 原因菌は大腸菌やブドウ球菌であることが多いため、最初にこれらの菌に有効な抗
生物
質を服用します。まれに、尿道の構造などに異常がある人もいるため、並行して尿道
の造
影を行ったり、糖尿病や免疫力の状態など、膀胱炎を重症化させる原因がないか検査
した
りすることもあります。これらの際には、抗生物質の服用をやめると再発する恐れも
ある
ため、より強力な抗生物質を長期間服用する必要があることもあります。

 初めて膀胱炎のような症状の出た方は、自己判断ではなく、必ず医療機関にご相談
され
るよう、ご注意ください。

■ 膀胱炎の市販の治療薬

 平成17年 4月の薬事法改正以前には、「ナリジクス酸カプセル」と「ウロナミン腸
溶錠」
という薬が、一般の薬局で購入可能でした。これらは大腸菌やブドウ球菌に有効な、
抗生物質(抗菌薬)の一種です。

 現在は、飲み薬で処方箋なしで購入できる抗生物質(抗菌薬)はありませんので、
もし
どうしてもOTCで膀胱炎の治療薬を、という場合は、漢方薬なら手に入ります。ここ
でい
くつかご紹介しますが、あくまでも医療機関で受診されるのが第一ということをご承
知お
きください。

 ●猪苓湯(ちょれいとう)
  → 急性膀胱炎。血尿、頻尿、残尿感、排尿痛、尿意頻数、尿量減少、口渇のあ
ると
    き、発汗はない。

 ●竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
  → 女性の膀胱炎に。泌尿生殖器系の炎症性疾患で、充血・腫脹・疼痛がある人
に用
    いる。排尿痛、排尿困難、頻尿、帯下、陰部の掻痒などを認める。比較的体
力の
    あるタイプに用いる。

 ●当期芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  → 猪苓湯や竜胆瀉肝湯の服用により、不快感がとれ、細菌の不在を認めた女性
に。
    血液の循環をよくし、尿の出をよくする。

■ 膀胱炎の予防

 ・身体の抵抗力・免疫力を落とさないように、規則正しい生活を心がける。過度な
ダイ
  エットを避け、偏食をしないようにする。

 ・トイレを我慢しない。

 ・水分を多めにとって、尿と一緒に菌を外に出すようにする。
 
 ・外陰部を清潔に保ち、下半身を冷やさない。

膀胱炎は多くの人がかかる病気ですので、恥ずかしいからと受診を先延ばしにするの
では
なく、早めに治療を受けるようにしましょう。


2007年4月26日(木曜日)

■花粉症向けの新しいスイッチOTC薬

まず、一般の薬局などで処方箋なしで買える薬のことをOTC(=over the
counter)
薬と言います。そして、医療用成分として使われていた成分をOTC薬にも使える
ようになったものを「スイッチOTC薬」と言います。スイッチOTC薬は、医療用
医薬品にのみ使用が認められている成分の中で、豊富な使用実績があり、比較的副作
用が少なく安全性の高い成分を、市販薬にも配合できるよう認可されたものです。
 もともと一般の市販薬は、安全性が重視され、効き目はマイルドとされていました
が、スイッチOTC薬の種類や数がだんだん増えてきて、効き目の良い薬が手に入り
やすくなりました。スイッチされたものとして有名なものに、胃腸薬のガスター10
などがありますが、他にも風邪薬や水虫薬、禁煙補助剤など多数の薬があります。

 OTC薬は、医療用医薬品に比べると、薬の単価自体は高くなりますが、医療機関
を受診するのにも費用がかかりますし、無視できないのが時間的な負担です。過度な
自己判断は禁物ですが、補助的にOTC薬を取り入れるのは、有効な手段と言えそう
です。

■花粉症向けの新しいスイッチOTC薬

 今年の花粉症シーズンに頼りになりそうな新しいスイッチ薬は、
成分名:塩酸アゼラスチン の 商品名:ハイガード と、
成分名:フマル酸ケトチフェンの商品名:パブロンZ です。

□ ハイガード
 ハイガ−ドはエ−ザイの医療用から今年発売されたアレルギ−性鼻炎の薬です。
医療用の商品名は、アゼプチンで、アレルギーの原因物質であるヒスタミンと、さら
にロイコトリエンの放出と付着もガードするのが特徴です。

※ ヒスタミンやロイコトリエンは、アレルギー原因の2大物質と言われています。ア
 レルギーの原因物質(花粉、ハウスダストなど)が体内の粘膜にくっつくと、その
 刺激が、粘膜内にある「肥満細胞」に伝達され、ヒスタミンやロイトコリエンを放
 出し、それが皮膚ふや粘膜にくっつくことによって、アレルギー症状が発症しま
す。

効能・効果
・ 花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和

  くしゃみ、鼻みず、鼻づまり
・ じんましん、湿疹・かぶれによる次の症状の緩和:皮ふのはれ、かゆみ

 この薬は、アレルギ−性鼻炎の薬であり、風邪などによる鼻炎は適用外となってい
ますので、ご注意下さい(15歳以下、妊娠中の方も服用できません)。
 花粉症などアレルギー性鼻炎の時に、皮膚がかゆくなってしまう方には、その皮膚
症状をやわらげてくれる作用もあるとのことです。

□ パブロンZ
 パブロンZはノバルティスファーマの医療用からスイッチOTC薬となった薬で
す。
OTCの販売会社は大正製薬です。医療用の商品名はザジテンで、
・抗アレルギ−作用(鼻粘膜でアレルギ−の症状が出ないよう抑える)
・抗ヒスタミン作用(ヒスタミンが神経を刺激するのをブロックして鼻水、くしゃみ
 などを防ぐ)
・抗炎症作用(花粉などで炎症を起こしている細胞を鎮める)

の三つの作用で、アレルギーに起因する、鼻炎や皮膚疾患、気管支喘息などに用いら
れてきた薬です。

 効能・効果
 花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和:
  くしゃみ、鼻みず(鼻汁過多)、鼻づまり

パブロンZの製品は、カプセル剤の「パブロン鼻炎カプセルZ」(15歳以上から服
用)
と、点鼻薬の「パブロン点鼻Z」(7歳から使用可)の2種類があります。

これまでのOTCの鼻炎薬は、塩酸フェニレフリン、塩酸テトリゾリンなどの血管収
縮性のもので、この種の薬は即効的に鼻づまりを解消できるものの、連用しているう
ちに、鼻づまりが前より悪化してしまう、という副作用があります(薬物性鼻炎)。
この鼻づまりは、薬をやめない限りよくならないため、花粉症に対してのように、長
期にわたって使用するべき薬ではありませんでしたので、ハイガードやパブロンZは
救世主と言っても過言ではありません。

このほか、ドライノーズ用として、日本臓器製薬から発売された「ドライノーズスプ
レー」も、鼻の中に潤いを与える商品として、花粉症治療用にも役立ちそうだ。

このドライノーズスプレーは、鼻腔内を洗浄する霧状の液体で、鼻の中に潤いを与え
て、鼻の乾燥間やムズムズ感や花粉の洗浄にも役立ちそうだ。この商品は、薬効のあ
る薬ではないため、長期連用などによる副作用がないため、補助的に使ってみるのも
一案かもしれない。

花粉症の対策グッズも豊富に出ています。今回ご紹介したアレルギー薬は、効果が出
はじめるまで約3週間ほどかかるため、早めの服用開始が大切です。詳しい用法・用
量や、服用にあたっての注意点などは、医師や薬剤師にお聞きしてください。

つらい花粉症の時期、さまざまな工夫で快適に暮らせるようになるといいですね。


2007年2月27日(火曜日)

ドライアイの対策

 冬場の乾燥した空気は、インフルエンザをはじめとする様々な病原体が好む環境であ
るだけでなく、お肌などにとっても大敵です。私の勤める薬局では、この時期、風邪の
患者さんが増える一方で、コンタクトトラブルで眼科に行かれた患者さんも増えてきて
います。
 眼の健康については以前このコラムでも触れたことがありますが、今回は中でも意外
と身近なトラブルである「ドライアイ」についてご紹介したいと思います。

■ 涙液とは

 涙液(涙)は、主に以下の働きをしています。

1.眼の角膜(眼球の一番前にある直径11.5mm〜12.0mmの透明な膜、黒目の部分)や結
  膜(角膜の淵からまぶたの裏側までを覆う粘膜)を覆い、潤いを保ちながら乾燥を
  防いでいます。

2.通常、ヒトは目の表面が乾かないようにするため、まばたきをして涙の分泌を促し
  ていますが、涙液が少ないとまばたき時に角膜や結膜を傷つけてしまいます。その
  ため、まばたきによる刺激から守る潤滑剤としても働いています。

3.細菌から角膜や結膜を守り、角膜に栄養や酸素などを運び、老廃物を除去する働き
  もしています。

 そして、涙液はムチン層、水層、油層の三つから出来ています。
 最も角膜表面に近いのがムチン層で、油層が涙液の最表面に位置しています。このう
ち真ん中の水層が涙液全体の98%を占めていますが、角膜が疎水性であるため、ムチン
層は水層がうまくのるようにしています。また、最表面の油層は、水層の蒸発を抑える
働きをしています。

■ ドライアイとは

 直訳すると「乾き目」という感じでしょうが、ドライアイとは単に眼が乾いている状
態ではなく、涙液が量的もしくは質的に異常をきたすことにより、涙液が減少したり、
涙液の蒸発が進みすぎることによって、角膜や結膜に障害を生じる状態を指します。
 ドライアイは進行すると、失明にいたる重症のものもあるそうですので、軽く考えず
に普段から眼のトラブルを感じている方は、ぜひ眼科でご相談されることをおすすめし
ます。

□ ドライアイの原因

 1.涙液の減少
  涙液は前述の通り三層で出来ていますが、このうち水層が減少することによって発
  症するモノです。水層は涙腺から産生されますが、涙腺や涙腺の分泌をつかさどる
  神経系が障害されると、水層が減少してしまいます。これらは「シェーグレン症候
  群」という病気や、「顔面神経麻痺」などが原因の場合があります。

 2.涙液の蒸発亢進
  涙液三層のうち、ムチン層や油層に障害が起きた場合、涙液の蒸発が進みすぎてド
  ライアイの状態になってしまいます。油層を産生する「マイボーム腺」の機能低下
  が原因ですが、細菌性結膜炎からマイボーム腺へ細菌の炎症が進んでしまったり、
  化粧品によってマイボーム腺を塞いでしまって二次的に炎症を起こしてしまう場合
  があるそうです。マイボーム腺とは、まつげの生え際のすぐ内側にありますので、
  アイメークのしすぎには、くれぐれも注意が必要です。
  
  病気ではなく、生活スタイルの関連として、パソコンやエアコン、コンタクトレン
  ズの装用なども、涙液の蒸発を進める危険因子となっています。
 
 3.薬剤の影響
  ドライアイという概念が浸透してきた近年、服用中の薬剤がドライアイを起こす原
  因となりうることも分かってきました。
 
  自律神経は活動する神経といわれる「交感神経」と、休む神経といわれる「副交感
  神経」の二つに分類され、必要に応じて自動的に切りかわって働くようになってい
  ます。このうち、副交感神経の作用を抑える抗コリン薬を服用すると、交感神経が
  優位な状態となるため、口渇、便秘、めまい、動悸などが副作用として出てくるこ
  とがあり、同様にドライアイ症状が現れることがあるというわけです。

  抗コリン作用のある薬はとても多く、例えば
   緑内障・高眼圧症用に使うβ遮断剤系の点眼薬
   (チモプトール、ミケラン、ハイパジールなど)
   非ステロイド系抗炎症薬の点眼薬
   (プロラノン、ブロナック、インドメロール、ジクロードなど)
  
  他に、睡眠・鎮静薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、総合感冒薬(かぜ薬)、
  抗めまい薬、鎮咳薬、胃薬、消化性潰瘍薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、
  抗不整脈薬 などがあります。
 
 
□ ドライアイの対策

 1.涙液の減少に対して
  ・人工涙液の点眼(防腐剤なしの使いきりタイプが良)
  ・ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸 などの点眼
   (ヒアルロン酸は医家向けのみ。コンドロイチン硫酸は一部配合の市販薬があり
    ますが、現状では防腐剤入りのものしか販売されていません)
  ・涙点プラグ装着
   → 点眼薬で効果が十分でない場合に、涙点を閉鎖するためにプラグを装着する
     もの。とても効果が高いとのこと。

 2.涙液の蒸発亢進に対して
  蒸しタオルやアイマスク、アイピローなどでまぶたを温めて、マイボーム腺の開口
  部に溜まった油の塊を軟らかくすることにより、マイボーム腺の働きを高めます。
  また、マイボーム腺に細菌の炎症などが起きている際には、その治療をします。
 
 3.乾燥しやすい環境(パソコンやエアコン、コンタクトレンズ装用など)に対して
  ・前述のような各種点眼剤の使用
  ・ドライアイ眼鏡の使用
  ・加湿器などで湿度を高める。
  ・エアコンの風を直に受けないようにする。
  ・パソコン作業時は1時間に15分程度の休憩をとるようにする。
  ・コンタクトレンズより眼鏡を使用するようにする。

ドライアイ症状の方の眼は、とても傷つきやすい(荒れやすい)環境にあります。点眼
薬を使用する際も、防腐剤の影響で眼の表面に障害を起こすことが多くあります。また
洗眼薬の使いすぎにより、眼の自浄作用が低下したり、乾燥を亢進してしまうこともあ
ります。また、紹介したような薬の影響でドライアイ→眼の上皮障害が起きているとこ
ろに、通常のドライアイ用の点眼をすることで、重症化してしまう例も多いそうです。

この季節、なるべく眼に負担がかからないように改善できるところは改善した上で、ま
だ眼の不快感などがあるという場合は、ぜひ眼科の先生にご相談してみてください。
色々なドライアイの検査があるので、すぐ診断していただけると思います。


2006年12月19日(火曜日)

乳中の薬

前回は、妊娠中の薬についてご紹介しましたが、今回は授乳中の薬についてまとめたい
と思います。妊娠中は、定期的に病院に通われていることもあり、受診先の先生にご相談
されることが多いと思いますが、出産後は赤ちゃんのお世話があることもあり、なかなか
お母さん自身の体調のために、病院へ通うことが難しくなり、薬局などで市販薬をお求め
になることが多いと思います。特にご相談の多いのが、風邪薬や頭痛薬、便秘薬などです。

 母乳にはとてもたくさんのメリットがあり、どのお母さんも、できれば赤ちゃんを母乳
で育てたいと望むことと思いますが、薬を服用しなければならないときは、その影響を考
慮しなければなりません。本来は、母親が服用した薬剤のうち、どの程度が母乳中へ移行
し、それを飲んだ赤ちゃんにどの程度吸収され、どの程度影響があるのかを調べて、授乳
の可否を判定しなければいけないはずです。しかし残念なことに、薬の認可の際、母乳中
への薬剤移行があるとなると、安全性優先の観点から、その医薬品の添付文書には「授乳
を中止する(避ける)」と記載されてしまいます。そのため、大半の医薬品が授乳を中止
するということになっています。ところが最近、海外では母乳育児の重要性が指摘されて
おり、同じ薬でも日本とは対応の異なる薬剤が増えてきました。

 そこで、授乳中の薬の影響について、最近の医療界・薬学界での見解や、本当に授乳を
避けるべき薬剤について、ご紹介したいと思います。

■ 妊娠中と、出産後の赤ちゃんへの影響度比較

 母乳を飲んでいる赤ちゃんに、お母さんの飲んだ薬剤の影響を考えるとき、妊娠中の胎
内の赤ちゃん(胎児)への影響と比較するとわかりやすくなります。妊娠中は、胎児はお
母さんと血流が同じになりますので、胎児はお母さんとほぼ同濃度の薬物を摂取している
ことになります。
 これに対し、お母さんの飲んだ薬剤のうち乳汁中へ移行する量は、母体の血中濃度より
低くなる場合が殆どです。このため、赤ちゃんが実際に摂取する薬剤量は、赤ちゃん自身
の治療量(影響量)に比べると低くなるため、妊娠中より格段に安全であることがわかる
と思います。

■ 授乳中の薬剤服用時の注意点

 妊娠中より安全とは言っても、やはり赤ちゃんへのリスクは最小にしたいもの。
 授乳中の薬剤服用時は、以下のような点に気をつけたいものです。

 1.不要な投薬を避ける。
   常用しているサプリメントなども、授乳期間はお休みしたほうが安心。

 2.同じような薬効の薬であれば、新薬よりも古くから使われていて、悪影響が報告さ
   れていない薬剤を選択する。

 3.赤ちゃんの月齢を考慮して薬の種類や量を決める。
   未熟児や新生児では、肝臓・腎臓などの代謝・排泄機能が未熟であるため、その分
   リスクが高まります。

 4.同じような薬効の薬の中では、以下のようなものを選ぶほうが安全。
   ・できるだけ半減期の短いもの(代謝が早い)
   ・タンパク結合性の高いもの(タンパク結合性が高いほど乳汁に移行しにくい)
   ・経口以外のもの(点眼・点鼻・点耳・軟膏・湿布・坐薬など外用薬は患部より吸
            収され、乳汁中への移行は殆どなし)
   ・高分子のもの(分子量が大きいほど乳汁に移行しにくい)

 5.投与した薬剤の血中濃度を考慮する。
   母乳は乳房中に蓄積されるのではなく、大半が授乳時に作られます。
   薬剤の影響を最小にするために、投薬を授乳直後にしたり、経口薬の場合は投薬後
   1〜3時間の血中濃度ピーク時の授乳を避けるようにする。

■ 授乳婦への使用に注意が必要な薬剤 (参照:調剤と情報 2006.10)

 □ 授乳婦禁忌の薬剤(通常、授乳婦には投与されない薬剤)

  ・抗がん剤
    抗がん剤には、細胞毒性があり、赤ちゃんの細胞代謝を障害する可能性があるた
    め非常に危険です。母親が服用している場合は、授乳を禁止します。

  ・乱用薬物
    (アンフェタミン、コカイン、ヘロイン、マリファナ、フェンシクリジンなど)

  ・放射性医薬品
    放射性医薬品を用いた核医学画像診断などを行った場合、その薬剤の影響が認め
    られなくなるまで、授乳を禁止します。

 □ これまでに、授乳または乳児に悪影響が報告されている薬剤
  ※記載は、それぞれ成分名(商品名)、主な薬効、報告されている影響 の順。

  ・アスピリン(アスピリン末、サリチゾン、バファリン330mg錠 など)
    解熱・鎮痛・消炎薬
    →代謝性アシドーシス(1例)
     (アシドーシスとは動脈血のpHが7.35以下になった状態で、体内に酸が異常に
      蓄積されたか、体内から異常に塩基が消失されて起こる病的な状態。)

   注)
   アスピリンは通常、15歳未満の小児には使用しないことになっています。
   インフルエンザ、水疱瘡などのウイルス疾患時に使用すると、ライ症候群を発する
   恐れがあるため、これらのウイルス疾患との判別が難しい解熱・鎮痛・消炎目的で
   の治療には、代替薬としてアセトアミノフェンを使用することになっています。

   授乳婦への代替薬としては、アセトアミノフェンやイブプロフェンが推奨されてい
   ます。(ただし、どちらも母乳に移行することがわかっているので、最小限)

  ・アセブトロール(アセタノール、セクトラール など)
    β遮断薬(本態性高血圧症、狭心症、頻脈性不整脈)
    →低血圧、徐脈、多呼吸
  ・アテノロール(テノーミンなど)
    β遮断薬(本態性高血圧症、狭心症、頻脈性不整脈)
    →チアノーゼ、徐脈など

   β遮断薬の授乳婦への代替薬としては、プロプラノロール(インデラル)やラベタ
   ロール(トランデート)が推奨されています。(ただしどちらも母乳に移行します)

  ・エルゴタミン(カフェルゴット、クリアミンA、クリアミンS など)
    片頭痛治療薬
    →下痢、嘔吐、けいれんなど。長期使用で乳汁分泌抑制。

    代替薬としては、スマトリプタン(イミグラン)の使用が推奨されていますが、
    添付文書によると、投与語12時間は授乳しないこと、となっています。

  ・クレマスチン(タベジール、キノトミン、テルギンG、ピロラール など)
    抗ヒスタミン薬
    →嗜眠状態、易刺激性、哺乳障害、頸部硬直など(1例)

   注)
   この報告は1例のみですが、市販薬の風邪薬などにもよく含まれている成分のため
   要注意。

   授乳婦への代替薬としては、ロラタジン(クラリチンなど)が推奨されています。
   (ただし母乳に移行します)

  ・スルファサラジン(サラゾピリン、アザルフィジンEN など)
    潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、非特異性大腸炎、関節リウマチ
    →出血性下痢(1例)

  ・フェノバルビタール(フェノバール、ルピアール、ワコビタール など)
    抗てんかん薬
    →鎮静、離脱時のけいれん、メトヘモグロビン血症
  

  ・プリミドン(プリミドン)
    抗てんかん薬
    →鎮静、哺乳障害

  ・ブロモクリプチン(パーロデル、アップノール など)
    抗パーキンソン病薬
    →授乳婦の乳汁分泌抑制

  ・メサラジン(ペンタサなど)
    潰瘍性大腸炎、クローン病
    →下痢(1例)
    

  ・リチウム(リーマスなど)
    躁病治療薬
    →乳児の血中濃度が治療濃度の3分の1〜2分の1に到達。
     これまで悪影響の報告はないが、血中移行が高値のため、乳児の血中濃度測定
     が必要。

 □ 乳児に対する影響は不明だが、悪影響が懸念される薬剤

  精神神経系に作用する薬剤は、母乳中への移行量はあまり多くないものの、薬剤自体
  や活性代謝物(代謝されて薬効を発揮するもの)の半減期が長く、乳児の血中に検出
  されることがあります。安定した状態で母乳育児に望むことが重要という観点からも、
  精神神経系の治療中の母親は、授乳を控えるほうがよいという意見が多いようです。

  ・抗不安薬
    アルプラゾラム、クアゼパム、ジアゼパム、プルトプラゼパム、ペルフェナジン、
    ミダゾラム、ロラゼパム など

  ・抗うつ薬
    アミトリプチリン、アモキサピン、イミプラミン、クロミプラミン、トラゾドン、
    ノルトリプチリン、パロキセチン、フルボキサミン など

  ・抗精神病薬
    クロルプロマジン、トリフロペラジン、ハロペリロール

  ・その他
    アミオダロン(アンカロンなど)
     生命に危険のある再発性不整脈用薬
     →甲状腺機能低下の可能性

    クロファジミン(ランプレンなど)
     抗ハンセン病薬
     →母乳中へ高率に移行、乳児の皮膚色素沈着 の可能性

    クロラムフェニコール(クロロマイセチンなど)
     抗生物質
     →骨髄抑制の可能性
    注)抗生物質は、乳汁移行のあるものが多いが、セフェム系は殆ど移行しない
      ため、セフェム系の抗生物質などへの変更が推奨される。
      他、乳汁移行はあるが、ペニシリン系やマクロライド系も推奨される。

    メトクロプラミド(エリーテン、テルペラン、プリンペランなど)
     消化器運動促進薬

    メトロニダゾール(フラジールなど)
     抗トリコモナス症薬
     →in vitro(試験管内実験)にて突然変異原 出現

この他、内服性の下剤は、乳児に下痢が起きる危険性が高いため、夜間に授乳をしている
期間中は、服用を避けるべきです。どうしても便秘が続いて辛い場合は、浣腸剤が推奨さ
れます。

今回は、授乳期に禁忌とされる薬剤を列挙させていただきましたが、投与の期間や量、ま
た赤ちゃんの発育具合などによっても、影響が異なってきますし、やはり授乳を避けるべ
き薬剤はたくさんあります。

授乳中に医療機関を受診される場合は、必ず授乳中であることをお伝えください。また、
いくら母乳が大切とは言っても、お母さんが元気であることが最も大切です!体調を崩さ
れたときは無理をなさらず、ミルクを併用したりしながら、早く元気になってくださいね。


2006年10月31日(火曜日)

妊娠週数による薬剤の影響

カテゴリー: - babykidsnet @ 15時42分18秒

朝晩の冷え込みが徐々に厳しくなってきて、これから風邪などが流行る季節ですね。私
の薬局でも、風邪薬を購入される方がかなり増えてきています。そんな中、よくご質問を
受けるのが、「妊娠中に飲める風邪薬をください」というもの。
 風邪というのは、とても身近な病気ですので、普段、風邪ぐらいなら市販薬で済ますと
いう方が多いことと思います。そして、妊娠中は抵抗力が弱っているので、気をつけてい
ても、どうしても風邪をひきやすくなってしまいます。
 風邪の薬は、対症療法(今ある症状を取り除くための治療)になるので、薬を飲まない
のが一番!と思うかもしれませんが、もしも風邪がひどくなって発熱してしまうと、お腹
の中の赤ちゃんも多少影響を受けることが考えられます。風邪そのものがお腹の中の赤ちゃ
んに移ることはありませんが、38度以上の高熱が何日も続くようですと、体力を消耗して
しまうだけでなく、子宮の収縮を起こす可能性も考えられます。症状によっては、解熱剤
を使って体温を下げてあげることもありますが、できればそうならない(ひき始め)うち
に、産婦人科の主治医に診てもらって、きちんと治すようにしましょう。
 妊婦さんの場合、妊娠の週数(月齢)に応じて、飲んではいけない薬があったり、妊婦
さんによって妊娠の状態もそれぞれ異なっているため、その時々に最適の治療法を選んで
いただけるのは、やはり普段の赤ちゃんの状態をよくご存知である先生が、最も把握して
いただきやすいからです。

 ですから、私が薬局でご相談を受ける際には、薬局内お薬をお勧めしておりません。し
かし、ご相談に見える方がとても多いので、今回、「妊娠の時期と薬の影響」について、
まとめてみることにしました。

■ 妊娠週数の表し方

 すでにお子さんをお持ちの方や、現在妊娠していらっしゃる方は、もうご存知のことで
ありますが、妊娠は、最終月経(妊娠の前にあった最後の月経)の開始日を妊娠0週0日と
し、月経周期が28日型の場は合、排卵・受精が最終月経から14日目であることが多く、こ
の日を2週0日とし、分娩予定日は40週0日となります。
 しかし、月経周期が不定だったり、周期が長い人の場合、最終月経を起算としながら、
超音波断層法によって胎児の発育を観察し、その大きさなどから予定日や妊娠週数を修正
していきます。

■ 妊娠週数による薬剤の影響

 1.受精(妊娠2週0日)から2週間目(妊娠3週6日)ごろまで

  薬剤は胎児に後に残るような影響は及ぼさないとされる時期ですが、体に残りやすい
 薬である金製剤(シオゾール=慢性関節リウマチ薬)、角化症治療薬エトレチナート、
 風疹生ワクチンなどは注意が必要です。
 この時期にはall or none(全か無か)の法則が働くと言われています。もし、薬剤の影
 響があるとすれば、着床できない(流産してしまう)か、完全に回復して後遺症を残す
 ことがないという意味だそうです。
  但し、体外受精などの特殊な場合には、先天異常が増えるとの説もあり、すべての場
 合に成り立つかどうかはまだ確立されていません。

 2.受精2週間後(妊娠4週0日)から妊娠4ヶ月の最後(妊娠15週6日)ごろまで

  妊娠2ヶ月が最も問題になります。この時期、胎児の中枢神経、心臓、消化器、四肢な
 どの重要な器官が発生、分化する時期で、催奇形の観点で最も過敏な時期になります。
 ホルモン剤、ワーファリン(血液凝固阻止薬)、精神病薬、脂溶性ビタミンなどは、注
 意が必要です。
  妊娠3〜4ヶ月頃は、性器の分化、口蓋の閉鎖などの時期になるため、これらへの影響
 が問題になります。胎児によっては、重要な器官形成がこの時期にずれ込むこともある
 ため、催奇形の可能性のある薬は、引き続き慎重な服用が必要です。

 3.妊娠5ヶ月(16週0日)から分娩まで

  この時期になると、薬による奇形のような形態的異常は形成されず、胎児毒性など
 (胎児の臓器障害、羊水量の減少、陣痛の抑制や促進、新生児期への薬剤の残留)が問
 題になる時期です。胎児への影響は、分娩間近になるほど大きくなります。

  例外として、ワーファリン(血液凝固阻止薬)や高血圧治療薬の一種であるACE阻害
 薬、胃潰瘍・十二指腸薬の一種であるサイトテック、アルカ、カムリードなどは、この
 時期でも胎児に形態異常を引き起こす可能性があります。これらの薬剤は、いったんで
 き上がった胎児の器官が破壊されて、先天的な形態異常が残ると考えられています。

  胎児毒性が報告されている薬剤には、以下のようなものがあります。
  ・アミノグリコシド系抗生物質(カナマイシン、ストレプトマイシンなど)
    :非可逆性の第芝梢牲仂祿
  ・テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシンなど)
    :乳歯のエナメル質染色、永久歯冠の染色)
  ・クロラムフェニコール系抗生物質(クロロマイセチンなど):新生児の灰白症候群
  ・サルファ剤(ウロサイダル、シノミンなど):新生児の高ビリルビン血症
  ・非ステロイド性消炎鎮痛薬(インダシン、バファリン、セデスなど)

■ 男性が服用して問題になる薬剤

 以下の薬は、催奇形性などの危険性が報告されているため、投与期間中および投与終了
後一定の期間避妊するよう、添付文書に記載されています。また、これらの薬は男性だけ
でなく、妊婦もしくは妊娠している可能性のある婦人には禁忌となっています。服用する
際には医師の注意をよくご確認ください。

 ・白癬治療薬 (グリセチンV、ポンシルFPなど)

 ・痛風発作予防薬 (コルヒチンなど)
    父親の服用で、ダウン症候群などの先天性異常児出産の報告あり。

 ・角化症治療薬 (チガソンなど)

 ・C型慢性肝炎治療薬 (レベトールなど)

 ・AIDS合併症治療薬 (デノシンなど)

 ・抗リウマチ薬 (リウマトレックス、アラバなど)

 ・免疫抑制薬 (イムラン、アザニンなど)

 ・難治性骨髄腫治療薬:現在治験中 (サリドマイド)
   ※サリドマイドについては、過去のコラムでご紹介済

■ 妊娠と薬の相談

 今回は、催奇形性や胎児毒性などの報告がある薬を中心にご紹介しましたが、どんな
薬でも、ご心配になることがあるかもしれません。

 東京の虎の門病院では、毎週1回、「妊娠と薬の相談」を予約制で受け付けているそ
うです。他にもお住まいの近郊で、このような相談を受け付けてくださる機関があるか
もしれません。飲んでしまったお薬のことなどで、ずっとずっと悩むような場合には、
ストレスによる赤ちゃんへの悪影響も心配です。
 ぜひ、このような専門機関もご利用になって、心健やかに赤ちゃん誕生の日までがん
ばってください。


2006年9月22日(金曜日)

不眠症とは

暑かった夏が終わり、そろそろ秋の気配を感じる頃となりました。だんだん
日が暮れるのも早くなって、「秋の夜長」を趣味などにあてて楽しまれる方も
増えてくるでしょうね。その一方で、快適な眠りを求めて、睡眠改善の相談に
見える患者さんも多くいらっしゃいます。そういえばテレビCMでもドリエルと
かグッスミンとか、眠りに関連する商品が紹介されていますね。
 実はドリエルが発売されるまでは、日本では一般の薬局で睡眠薬を購入する
ことは不可能でした。睡眠障害で悩む人は、医療機関で受診して、お医者様の
処方箋を受け取ってからでないと、睡眠薬を入手できなかったのです。
 でも受診してまで・・・と言う程度で、眠りの悩みを持つ方も潜在的にたくさん
いらっしゃったようで、今や大ヒットと言っても過言でない現象が起きています。

 そこで今回は薬局で買える睡眠改善商品についてご紹介したいと思います。

■ 不眠症とは

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、「平常時と比較
して睡眠時間が短くなり、身体や精神に不調が現れる病気である。」とあり、
睡眠障害の一種です。心身の健康を維持するために必要な夜間の睡眠量は人そ
れぞれで、短い睡眠でも十分疲れがとれる人がいる一方で、毎日10時間とらな
いとリズムが狂うという人もいます。
 不眠症は、通常の自分に適した睡眠時間がとれなくなっている状況で、その
症状には大きく4つのタイプがあると言われています。

 □ 入眠障害
  寝つきが悪い。床についてから眠るまでに1時間以上要する場合。
  不眠の中では最も訴えが多い症状。

 □ 中途覚醒
  夜中に何度も目が覚めてしまい、再び寝付くのが難しい。

 □ 熟眠障害
  眠りが浅く、睡眠時間の割りに、朝起きたときに疲れがとれていない。

 □ 早朝覚醒
  朝早く目覚めてしまい、その後眠れない。お年寄りに多い。

■ 不眠症の原因

 普段は何でもないのに、ちょっとした心配事があったり、旅行先など環境が
変わったために、一時的に不眠になることもあります。これは数日間の場合、
一過性不眠。1〜3週間持続するものを短期不眠といい、ほとんどは、原因とな
る心配事や環境条件が解決すれば、元のように眠れるようになり、心配な不眠
ではありません。

 対して、1ヶ月以上の不眠は長期不眠とよばれ、その原因として以下のような
ことが潜在していることも考えられます(『ウィキペディア(Wikipedia)』よ
り抜粋)。

 1.内科的疾患によるもの
  心疾患:狭心症、心不全など
  呼吸器疾患:気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群など
  消化器疾患:逆流性食道炎、胃潰瘍など
  内分泌代謝疾患:甲状腺機能亢進症、クッシング症候群など
  脳神経障害:脳血管障害、パーキンソン病など
  
 2.精神疾患によるもの:躁うつ病、統合失調症、不安障害など

 3.泌尿器疾患によるもの:夜間頻尿をきたす疾患

 4.痛みや痒みによる不眠:整形外科的疾患、掻痒性皮膚疾患など

 5.薬剤の副作用によるもの、アルコール連用

■ 不眠症の治療

 ・休日を含め、毎日同じ時間に起きること。起きたら太陽の光を浴びること。
 ・夕方以降は激しい運動をしないこと。
 ・睡眠薬は医者の指示を守り、勝手に中断しないこと(減量法、離脱法を守る
  こと)。止めたければ主治医に相談すること。
 ・無理に寝ようと意気込まない。
 ・寝る前にカフェインをとらない。
 ・ゲーム・テレビ・ネットなどは脳への刺激が強いので、寝る1時間前にはし
  ない。
 ・暑ければ部屋をすずしくし頭を冷やす。
  (首を冷やすと頭が冴えるため逆効果)

■ 主な睡眠薬の分類

 現在、医療機関で処方される睡眠薬は、大きく分けて以下の4分類があります。
 ・ベンゾジアゼピン系(耐性や依存症を生じにくい安全な薬剤)
 ・非ベンゾジアゼピン系(ベンゾジアゼピン系に比べ、さらに自然な睡眠を
  誘導する薬剤として開発された)

 ※かつてはよく使われていたが、現在は手術前の麻酔など、特殊な場合を除き
  ほとんど使われていない
  →・バルビツール酸系
  →・非バルビツール酸系

 また、これらは作用時間の長さによって、以下の4つのタイプに分けられます。
 入眠障害の方には、超短時間〜短時間作用型、中途覚醒や早朝覚醒の方には、
中間作用型や長時間作用型の睡眠薬が使われます。よく話題に上がるハルシオン
は、一般名がトリアゾラムで超短時間作用型のお薬です。

 1.超短時間作用型:すぐ効き始め、2〜4時間で効果がなくなる
  例)非ベンゾジアゼピン系(酒石酸ゾルピデム、ゾピクロン)
    ベンゾジアゼピン系(トリアゾラム)

 2.短時間作用型:6〜12時間効果が持続する
  例)非ベンゾジアゼピン系(塩酸リルマザホン、ブロムワレリル尿素)
    ベンゾジアゼピン系(ブロチゾラム、ロルメタゼパム) 

 3.中間作用型:12〜24時間効果が持続する
  例)バルビツール系(ベントバルビタールカルシウム、アモバルビタール、
            フロルプロマジン・プロメタジン配合剤)
    ベンゾジアゼピン系(エスタゾラム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、
              フルニトラゼパム)

 4.長時間作用型:24時間以上効果が持続する
  例)バルビツール系(フェノバルビタール)
    ベンゾジアゼピン系(塩酸フルラゼパム、フルラゼパム、ハロキサゾ
              ラム、クアゼパム)

 以上のように、睡眠薬にはあらゆるタイプのものがあるため、効果が長すぎ
るものを飲んだり、あるいは、深夜過ぎに飲んだりすると、翌日の午前中まで
薬の効果が残ってしまい、結局またリズムが乱れて、翌日の夜の寝つきが悪く
なる、という悪循環が起きる危険性があります。
 また、超短時間作用型の薬は、急に眠くなるので、飲んだ後すぐに就寝する
ようにしないと、ベッド以外で眠ってしまうことさえあるそうです。また服用
後、眠るまでの間の記憶を失うこともあり、特にアルコールと併用したときに
よく起きるそうです。他にも併用することで作用が増強されるお薬やサプリメ
ントもありますので、服用される方は十分ご注意ください。

 現在、主流となっているベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系のお薬
は、長期間続けても、習慣性はなく安全に使用できるようになりましたが、勝
手に服用をやめたり、量を多く飲んだりしては大変危険です。
 日常生活の改善を行いながら、睡眠薬はお医者様の指示通りに服用すること
が大切です。

■ 薬局で買える「ドリエル」とは

 前項でご紹介した睡眠薬は、中枢神経系のGABA受容体というところに作用し
ます。GABAとは、最近よく話題になっている、γーアミノ酪酸というアミノ酸
の一種で、脳や脊髄に存在して、抑制系に働く神経伝達物質です。
 前述の睡眠薬は、GABAに働くことにより、GABAと同じような効果を発揮する
ことにより、鎮静、抗不安作用や催眠作用、麻酔作用、抗けいれん作用が得ら
れるのです。

 一方、ドリエルの有効成分である塩酸ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン
薬のひとつで、風邪薬や花粉症の薬に、くしゃみや鼻水を抑える成分として配
合されているものと同種にあたります。
 風邪薬などを飲むと、眠くなったりだるくなったりしたご経験があると思い
ますが、ドリエルは、実は抗ヒスタミン薬の副作用である眠気の部分を、睡眠
改善薬として活用したお薬なのです。

 ですから、長期的な慢性不眠の方ではなく、寝つきが悪い、眠りが浅い、と
いう一過性の不眠の方が数日間試してみる類のものであり、また、普段風邪薬
眠気を感じない、という方には効果が期待できないかもしれません。

■ 快眠サポート飲料「グッスミン」とは

 もうひとつ、テレビCMでよく見かける「グッスミン」。こちらは医薬品では
なく、飲料(食品)に分類される商品です。
 発売会社ライオンの資料によると、眠れないと感じる女性の大半の原因が、
ストレスや身体の冷えであることがわかったそうで、GABA(γーアミノ酪酸)
が多いトマト酢に注目し、1本にトマト酢6000mg、そしてさらにGABA100mgを
配合したのがグッスミン。
 トマト酢の効果で、手の指先の末梢血管が拡張子、体温が上昇する作用によ
り、快適な眠りにつける、としています。

 同じライオンから出ている「グロンサントマトの赤酢ドリンク」は男性をター
ゲットにしているようで、謳い文句は「働き続ける頭脳とカラダに!」ですが、
こちらもトマト酢6000mgとGABA100mgが配合されています。
 

 
 睡眠関連としては、以前、このコラムでもメラトニンをご紹介しました。メラ
トニンも一時は大ブームを巻き起こしましたが、最近はどうなっているのでしょ
うか?
 薬局でドリエルはグッスミンを購入していかれた方たちは、よい眠りにつけた
かな〜?と少しだけ気になりつつ、すぐ爆睡する日々が続いている私ですが^^;
もしリピーターさんにお会いできたら、効果のほどよく確かめてみたいと思って
います。


2006年9月1日(金曜日)

子育ての目標

みなさんは、自分の子どもに、どんな人間に育ってほしいですか。
優しい人になってほしい。人に迷惑をかけない人間になってほしい。
頭が良くて生き生きした人になってほしい。何よりも思いやりが大事
・・・・・・などなど。
とにかく親というものは、いろんな願いを子どもに托し、いい子に
育ってほしいと祈りながら育てています。

頭のいい子も素敵。健康でがんばる子も素敵。思いやりのある優しい子も言うこと
ありません。

でも、私の話も聞いてください。
私は精神科医として、たくさんの心の病を持った人と接してきました。
そういう人と接しながら、同時に自分の4人の子どもを育ててきました。
私が自分の子どもに願ったことは「しあわせになってほしい」ということでした。

自分の子どもの幸せを願わない親はないですよね。普通はその願いの結果が、成績で
あったり
学歴であるのかもしれません。
でも私の場合は違いました。
立派な大学を出ても精神の病になる人をたくさん見てきました。
成績も学歴も、それだけでは頼りにならない。
そういうことを、いやというほど知らされました。
また精神の病気をしてもたくましく回復していく人がいます。逆に病は軽いのに、な
かなか
社会に出ていけない人もいます。
その違いは何だろう、とずっと考えながら子育てをしていたのです。

人間はどんな運命に翻弄されるかわからない存在です。
たとえどんな環境に置かれてもしあわせになっていく力を持っているかどうか。それ

実は一番肝心なことではないでしょうか。

一言でいうと「子育てとは、子どもが親から自立して、どんな環境に置かれても
生きていけるように育てること」なのです。親はずっとつき添っているわけには
いかないのですから。

良い成績をとってほしい、と願う前にしなければいけないことを、たいていの親は
忘れています。
きちんと食べてちゃんと寝る、などの生活習慣。
自分の身の周りのことをできること。家事を手伝うこと。
からだを動かして働くことの大切さ。
自分の心を見つめる力。相手のことを考える想像力。
人とつきあえる対人関係力。そういうことが人間の基本です。

人間として生きていくために最低限必要なことを、親と共に暮らす間に
しっかり身につけさせること。
それは一方的にしつけるのではなく、やはり親自身の暮らし方、生き方をただすこと
でしか
伝えられません。

親は自分の暮らし方を見つめ、自分の生きかたを考えるしかないと思います。
また夫であり妻である伴侶としっかり向き合っているかどうか。
夫婦で大事な問題を話しあえないのに、子どもに対人関係を言う資格はないと
いうことです。

子どものあれやこれやを心配する前に、たまにはご自分の身をも振り返って
みてください。
子育て18年なんて、人間の一生からすればあっという間の短さ。
大切にいとおしみながら親も子も「しあわせ力」を身につけてくださいね。

こばやしあやこ


2006年8月17日(木曜日)

メタボリックシンドロームとは

私が勤める薬局では、少し前から、杜仲茶を探すお客様が跡を絶ちません。
あいにく入っても入ってもすぐその日のうちに無くなってしまい、今後の再入
荷は目処が立たないような状況。お客様も「どこに行っても売り切れ」とこぼ
していらっしゃいます。私は見逃してしまったので、どのような紹介だったの
か定かではありませんが、ある健康美容番組で、メタボリックシンドロームの
改善策の一つとして取り上げられたようなのですが、お客様達は「痩せるお茶」
との認識。それもメタボリックシンドロームとはまだ縁のなさそうな、ダイエッ
トに興味をお持ちの女性が圧倒的なんです。
 メタボリックシンドロームは、少し前からテレビCMでも取り上げられていま
すが、まだまだよくご存知ない方が多い>ように思いますので、今回ご紹介して
みたいと思います。

■ メタボリックシンドロームとは

知識探索サイト ジャパンナレッジによると
 
 メタボリックは「代謝」の意味で、代謝症候群ともよばれる複合生活習慣病。
血糖値や血圧がやや高く、お腹が出てきた人をさす。食べすぎや運動不足が原
因とされるが、血糖や血圧、中性脂肪の値が極端に悪いわけではない。しかし
糖尿病、高血圧症、高脂血症に重複してかかった場合、放置していると動脈硬
化になりかねないという。

 とあり、内臓脂肪の蓄積により、動脈硬化、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗
塞)などの強い危険因子となるといわれています。以前は「死の四重奏」「内
臓脂肪症候群」「シンドロームX」など色々な呼ばれ方がありましたが、21世紀
になってWHO(世界保健機関)が名称を統一する試みとして、この名が付け
られました。

□ メタボリックシンドロームの診断基準

 必須項目: 内臓脂肪の過剰な蓄積
       ウエスト周囲の長さが、男性で85cm以上、女性で90cm以上

 上記を満たしている人で、以下のうち2項目以上あてはまる人は「メタボリッ
クシンドローム」と診断されます。
 
 1.中性脂肪(トリグリセリド値)が150mg/dl以上、
   または(かつ)HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40未満

 2.血圧の上(収縮期血圧)が130mmHg以上、
   または(かつ)血圧の下(拡張期血圧)が 85mmHg以上

 3.空腹時の血糖値が 110mg/dl以上

 ※ただし、正式な診断にはCTスキャンなどで内臓脂肪量測定を行うことが
  望ましいとされています。

□ 内臓脂肪とは

 皮下脂肪とは、皮膚のすぐ下にある「つまめる」脂肪のことで、エネルギー
を貯めたり、体温を正常に保つなどの役割をしています。一方、内臓脂肪とは
内臓の周りについている脂肪のことで、特に「腸管、胃腸の周りについている」
部分の蓄積が、メタボリックシンドロームには重要な条件となっています。
内臓脂肪が過剰に蓄積すると、中性脂肪やコレステロール、血糖値などが高く
なり、生活習慣病に発展しやすくなります。

□ メタボリックシンドロームの治療

 一つの病名として表現すると、少し仰々しいかもしれませんが、現在のとこ
ろ、日本国内ではまだ薬での治療は殆ど行われていません。

 まず基本となるのが、蓄積している内臓脂肪を減少させることです。そのた
めに、食事療法・運動・行動変容を3本柱とする生活全般の改善が推奨されて
います。
現在ブームとなっている「杜仲茶」は、この内臓脂肪を減らすのに有用だっ
たとの実験結果が紹介されたようです。

 脂肪を減少させよう、というとかなり大変なことのように感じられるかもし
れませんが、メタボリックシンドロームに関しては、体重を5%落とす(例え
ば60kgの人が3kg落とす)だけで、診断基準に関係するパラメータがかなり改善
するそうです。5%の減量程度では、皮下脂肪はほとんど変わらず、内臓脂肪
だけが落ちるとのこと。

 高血圧・高脂血症・糖尿病などの疾患のある方は、それぞれの治療を行いな
がら、以下のような食事運動療法を行っていくと、病態自体の改善にもつなが
ります。

 1.適正なエネルギー摂取
 2.脂肪を摂取エネルギーの25%以下とする
 3.単純糖質と塩分・アルコールの制限
 4.食物繊維の摂取
 5.抗酸化物質の摂取
 6.高コレステロール血症を伴うときはコレステロール制限
 7.脂肪を燃焼させる1日20〜30分の有酸素運動
 8.体重減少は、月1〜2kgで十分であり、1年後にも体重が減少している
   こと
 9.体重記録の励行

 ちょっと肥満、血圧や血糖値が少し高め、という程度の方たちには、ご自分
が病気(もしくは病気の予備軍)であるという認識がなかなかないことと思い
ますが、生活習慣を改善して、それぞれの値を正常値に近づけるということは。
とても大切なことです。ご家族などに危険因子をお持ちの方がいらっしゃった
ら、ぜひアドバイスしてさしあげてください!

□ 将来的な治療法? アディポネクチン

 何よりも、日常から適正なカロリーとバランスのとれた栄養の摂取が大切で
すが、最近では「メタボリックシンドロームの方には、アディポネクチンとい
うホルモンが不足している」という研究結果が出てきています。

 脂肪細胞は、過剰エネルギーの「貯蔵庫」という役割以外に、様々な生理活
性物質を分泌する「内分泌細胞」としての役割を持つことがわかってきました。
この脂肪細胞から分泌される生理活性物質を総称して「アディポサイトカイン」
と呼ばれています。「アディポ」とは脂肪という意味だそうです。

 アディポサイトカインには、動脈硬化を予防する「善玉アディポサイトカイ
ン(アディポネクチン)」と、動脈硬化を促進させる「悪玉アディポサイトカ
イン(PAI-1やTNF-αなど)」があります。正常な状態では、これら善玉・悪玉
がバランスよく分泌されているのですが、内臓脂肪がたまり始めると、善玉(
アディポネクチン)の分泌量が減り、悪玉が過剰に分泌されるのです。この分
泌の乱れが生活習慣病を招き、動脈硬化を進展させると考えられています。

 現在、2型糖尿病の薬として使われている「ピオグリタゾン」という薬を、10
人の患者さんに3ヶ月間投与したところ、全例で血中のアディポネクチン濃度が
上昇し、10例の平均値は3倍もの上昇だったそうです。そればかりでなく、血糖
や血圧の改善効果も認められ、動脈硬化の発症や進展予防に役立つ可能性がある
と期待されています。

 我が国ではこの種の薬で承認されているのは、上記ピオグリタゾン1剤のみで
すが、海外ではどんどんこの種の薬の開発が進んでいます。今後は具体的にメタ
ボリックシンドロームの治療薬が登場してくることとなるかもしれませんね。


2006年8月10日(木曜日)

家庭は社会の縮図・その2 

ごく普通の家庭では、お父さんがいてお母さんがいて、子供が1人〜4人くらいいて、

たまにおじいさんやおばあさんが同居しているという形です。
家庭という社会は、祖父母を底辺にしてその上に父母がいて、とんがり部分に子どもがいる、
というようなにピラミッド型を構成しています。

その中では きまりや暗黙の了解のもと、ある程度の秩序が必要です。
家庭は憩いの場であるからです。でもそれだけでは、人間の心は満足しないし、
特に子供の心は育ちません。

家庭といっても、もとはといえば他人の集まり。特に 夫婦は元は他人。
別々の人格、性格のふたりがいわば24時間、ひとつ屋根の下で暮らすのですから、
当然争いも起きます。
争い事があることはとても自然なこと。
夫は出かけたいと思い、妻は休んでいたいと思う。
夫は買いたいと思い、妻は今が辛抱の時だと思う。意見の違い、それは自然なことですよね。

肝心なことはその時、妻や夫がどんな対応をするかです。

妻がずっと我慢をすることで 夫婦の家庭の平和を保ってきた、というご夫婦がいます。

それだけを見てきた子どもにとっては、自分の意見を言うことは「悪いこと」です。
意見や気持ちが違うときに堂々とそれを表現する父母を一度も見ていなければ
「人間は我慢をすることで平和を保つ」ことしか考えなくても不思議ではありません。

また 意見の違い、性格の違いからしゅっちゅう喧嘩ばかりしている夫婦もいます。
その間に立つ子供たちは、せめて自分たちだけでも我慢して家庭の平和に寄与しなければ
生きていけなくなります。自分の気持ちを考える余裕もないまま自分をおさえ、
父母の顔色を伺いしながら成人してしまうとどうなりますか。
思春期の病気がそういうことからくることも多いのです。

夫婦の意見や嗜好の違いを、それなりに尊重した上でどうやたったらみんなが快適に
生きていけるか。それを模索し続ける行為が「暮らす」ということです。
そんな「暮らし」があって初めて、子供の心が育ちます。


2006年7月12日(水曜日)

禁煙治療が保険適応に

■ 禁煙治療が保険適応に

 今月1日、3年ぶりにたばこの値上げが実施されました。今回の値上げでは人気
銘柄の価格が300円台に突入したこともあり、先月1ヶ月間に買いだめされたたば
この数量は過去最高となったそうです(日本たばこ産業(JT)集計)。
 
 禁煙治療については、以前このコラムでも禁煙補助薬ニコレットを中心にとり
あげたことがありますが、さらに愛煙家には肩身のせまい環境が一般化しつつあ
るこの頃。大量の買いだめという現状を考えると、「どんなに値上げされても吸
いつづけるぞ!」という愛煙家の叫びが聞こえてきそうな気もしますが(笑)、
思い切ってたばこをやめる、という選択肢も考えてみませんか?

 医療業界では既に、喫煙=ニコチン依存症(=疾病のひとつ)と位置づけられ、
我が国でも今年4月から禁煙治療が保険診療で受けられるようになりました。
 そこで今回は禁煙治療の現状についてご紹介したいと思います。

□ 日本で実施されている禁煙治療法

 たばこは一般に「嗜好品」と言われていますが、実際には心理的な依存と身体
的な依存の2つの依存があり、身体的依存のために禁煙成功率は非常に低いもの
となっています。そこで、身体的依存を軽減するためにニコチン置換療法があり
ます。
 ニコチン置換療法とは、喫煙習慣をニコチン依存ととらえ、ニコチン依存を段
階的に改善しながら禁煙に導いていく方法で、ニコチンを喫煙以外の方法で摂取
し、そのニコチン摂取量を徐々に減らし、ゼロに持っていこうとするものです。

 日本では、薬局で買える市販薬として「ニコレット」(ニコチンがゆっくりと
放出されるように工夫されたガム製剤)、そして医師の処方箋が必要な「ニコチ
ネルTTS」(ニコチンを含有したシール(パッチ)を体に貼り、皮膚からニコチ
ンを吸収させる製剤)が販売されています。
 これまではニコチネルTTSは保険適応外のため、自費扱いになっていましたが、
この4月からは、一定の基準を満たせば保険適応を受けられるようになりました。
(※ニコレットは従来どおりの一般市販薬のままです。)

□ 禁煙治療保険診療の基準(資料より抜粋)

 禁煙治療が保険診療になったということは画期的なことですが、実は保険の適
応になるには幾つかの条件があります。今すぐ近隣の医療機関に出かけても、保
険で禁煙治療が受けられるわけではありませんので、ご注意ください。

 1.対象患者の基準
  入院治療中の患者以外の患者で、次のすべてに該当するものであって、医
  師がニコチン依存症の管理が必要であると認めたものであること。
  (1)「禁煙治療のための標準手順書」に記載されているニコチン依存症に
   係るスクリーニングテスト(TDS)(2.に記載)でニコチン依存症と
   診断されたものであること。
  (2)1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じて得た数が200以上であること。
  (3)直ちに禁煙することを希望している患者であって、「禁煙治療のため
   の標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受け
   ることを文書により同意しているものであること。

 2.ニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS)
  ※下部の問いに対する回答を「はい」1点、「いいえ」0点として計算し、
   合計点数5点以上がニコチン依存症と診断される。

  問1: 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことが
     ありましたか?
  問2: 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?
  問3: 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしく
     てたまらなくなることがありましたか?
  問4: 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか?
    (イライラ、神経質、落ち着かない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、
     眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
  問5: 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることが
     ありましたか?
  問6: 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに
     吸うことがありましたか?
  問7: タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸
     うことがありましたか?
  問8: タバコのために自分に精神的問題が起きているとわかっていても、
     吸うことがありましたか?
  問9: 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか?
  問10:タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かあり
     ましたか?

 3.施設基準
  ※以下のような基準を満たした施設が地方社会保険事務局へ届け出をするこ
   とが必要で、すべての医療機関が禁煙治療の保険診療を行えるわけでは
   ありません。

  (1)禁煙治療を行っている旨を保険医療機関内の見やすい場所に掲示してい
   ること。
  (2)禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること。
  (3)禁煙治療に係る専任の看護士又は准看護士を1名以上配置していること。
  (4)禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること。
  (5)保険医療機関の敷地内が禁煙であること。なお、保険医療機関が建造物
   の一部分を用いて開設されている場合は、当該保険医療機関の保有又は
   借用している部分が禁煙であること。
  (6)ニコチン依存症管理料を算定した患者のうち、喫煙を止めたものの割合
   等を、別添2の様式8の2を用いて、社会保険事務局長に報告していること。

 現在、全国で禁煙支援を受けることのできる病院・医院の一覧が以下のサイト
に紹介されています。お住まいの地域をクリックして、お探しの都道府県へジャ
ンプしてください。尚、禁煙治療に保険が適用できる医療機関(ニコチン依存症
管理料の適用を申請した医療機関)は、医療機関名の前に ★適★ マークがつい
ています。
 受診を希望される方は、必ず事前に医療機関にご確認の上、お越しください。
 http://kinen-marathon.jp/info/hospital-01/

□ ニコチン代替療法
 以前のコラムと重複になる部分もありますが、あらためて日本で販売されてい
る「ニコレット」と「ニコチネルTTS」について、利点・欠点を含めご紹介しま
す。

 ◆ニコレット(ガムタイプ)

  一般の薬局で買える市販薬で、ニコチンがゆっくりと放出されるように工
 夫されたガム製剤です。
  禁煙を禁煙を開始した最初の4週間は、たばこが吸いたいと思ったときに
 本剤を使用します。特に1〜2週目は離脱症状がありますが、禁煙に慣れてき
 たら、1週間単位で1日の使用個数を1〜2個ずつ減らしていきます。いつまで
 も本剤に頼るのではなく、冷水やお茶を飲む、歯を磨く、飴やガムを食べる
 などの対処法も行いながら、減量に努めます。
  効果の発現は使用後30分以内と早いので、常に携行して、吸いたくなれば
 使用できるという安心感が得られますが、血中のニコチン濃度は喫煙ほど高
 くないため、1日15本以上の喫煙者の禁煙法としては弱いとの指摘もあります。
 本剤を使っても順調にいかない肩には、パッチ(ニコチネルTTS)の使用が
 勧められます。
  ※ガム製剤になっていますが、ニコチンが口の粘膜からゆっくり吸収され
  るようになっていますので、お菓子のガムのように何度も強くかんだりす
  ると、刺激が強すぎることがあるようです。唾液は飲まないようにし、刺
  激が気になるときは噛む回数を減らしたり、ほほの両側によせて噛むのを
  休むようにします。

 ◆ニコチネルTTS(パッチ製剤)

  医師の処方箋がないと手に入れられません。保険診療の適応となりましたが、
 施設基準が整っていない医療機関では自由診療になりますのでご注意ください。

  ニコチンを含有したパッチを体に貼って皮膚からニコチンを吸収させる製剤
 です。通常、パッチは朝寝起きに貼り、次の日の朝に貼り替えます。貼る場所
 をタオルなどでよくふいた後、けがや皮ふ病のある場所、ベルトのあたるとこ
 ろ、毛の濃い部分をさけて上腕、腹部、腰背部のいずれか1ヵ所に貼ります。
  1日1回新しい薬にはりかえますが、貼り替える時は前回と同じ場所を避けま
 す。
  1日1回で良く、血中のニコチン濃度が喫煙に近くなるため、効果が確実です。
 しかし、夜間就寝中も貼っていると不眠や気分不良を訴える方もいらっしゃる
 ようです。また皮膚が弱いと継続するのが難しかったり、かゆみや湿疹などの
 副作用を訴える方もいらっしゃるそうです。
  ※この薬を使用している間は、絶対にたばこを吸ってはいけません。
   もしこの薬を貼っているときに喫煙すると、体内に過量のニコチンが取
   り込まれる可能性があり、頭痛、めまい、吐き気などがあらわれる恐れ
   があります。

□ 禁煙を成功させるために

 禁煙サポートに役立つサイトを利用するのもおすすめです。
 禁煙に挑戦しても、その1年後に成功している人はたった1割だとするデータが
あります。以下にご紹介するサイトで支援を受けている方々の成功率はかなり高
いそうです! 禁煙を考えている方は、ぜひ参照してみてください。

 ◆インターネット禁煙マラソン
  http://kinen-marathon.jp/
  登録すると、メールを使った双方向サポートで、ガッチリ禁煙を支援してく
  れます。1年後の禁煙率が80%だとか。

 ◆禁煙医師連盟
  http://www.nosmoke-med.org/

◆禁煙ネット
  http://www.horae.dti.ne.jp/~kinennet/

□ 日本で未発売の禁煙薬

◆中毒を断ち切る薬 :ブプロピオン

日本で発売されている禁煙薬は、前述したように、ニコチンをガムやパッチ
で補充するものですが、この方法では脳内におきているニコチン依存を断ち
切ることができず、またもとの喫煙に戻ってしまうことが少なくないとの意
見があります。

そこで欧米などでは、脳内のニコチン依存のおきている部位に直接作用し
て、「中毒を断ち切る」タイプの薬(商品名Zyban)が発売されています。

この薬は、塩酸ブプロピオンを成分とする抗うつ剤(SSRI)で、抗うつ
剤の受容体とニコチンの受容体が一部合致するため、効く人がいるのだろう
とのこと。経口製剤で、この薬による禁煙成功率はニコチン補充薬より高い
と言われていますが、日本では未開発です。医師の処方が必要な薬です。

◆禁煙に伴う離脱症状を緩和する薬:バレニクリン

前述のブプロピオンに比べ、禁煙成功率が倍増とのデータも。先ごろ米国FDAで
承認され、日本国内でも臨床試験が終了、今後の承認が待たれている段階です。
この薬は、選択的にニコチン性アセチルコリン受容体に作用する薬で、禁煙に伴
う離脱症状を緩和し、喫煙による満足感を抑える作用があるそうです。

これらの禁煙薬の開発とともに、さらに禁煙治療が広がっていくことになりそう
ですね。禁煙にトライしようと思われている方は、ぜひこの機会に第一歩を踏み
出してみてください♪


2006年6月27日(火曜日)

家庭は社会の縮図・その1

家庭は社会の縮図というのは、よく言われることだ。だけど、じゃあ具体的には
どうすればいいのか、ということになるとむつかしい。

みなさんは何らかの形で今、あるいは今までに働いた経験があると思う。
その時の上司のことを思い起こしてほしい。
上司から難題をふきかけられたとき、どうするだろう。
上司の言う通りにしようとすると自分に無理がくる。かと言って上司に反抗すると
後がやりにくい。
そういうむつかしい状況に置かれるというのは、社会に出ると、日常茶飯事に
おきてくる。
そういうとき、ただただ自分だけが我慢するのではだめだ。またいつも反抗する
だけでも浮いてしまう。
そして、時と場合によって使いわけ、その時どきを乗りきってきたからこそ、あなた
は今
社会の中で生き抜いてきたといえるわけだ。

では家庭ではどうだろう。夫が横暴なことを言ったとき、あるいは理不尽な振る舞い
をした時。
そんな時、どうしていますか。
ただただ我慢に我慢を重ねてはいませんか。
家庭の中にあって、夫なり妻なり姑さんなりが、理屈に合わないことを言ったりした
りしたときに、
感情的になるのではなく、また ただ我慢するのではなく、きちんと自分の気持ちを
言えますか。
女性に一番よくあるパターンは「自分さえ我慢すれば丸くおさまる」という態度。
私もかってそうでした。
そしてそれこそ女性として賢い態度だと思っていました。

みなさんはどうですか。
ふだんの自分の振る舞いを思いおこしてみてくださいね。
次回はその具体例と子どもに与える影響について話します。


2006年6月14日(水曜日)

ジェネリック医薬品

最近「あなたの薬代が5〜7割も安くなる!」というようなフレーズとともに、
ジェネリック医薬品を推奨する宣伝がよく見られるようになりました。本当に薬
代がそんなに安くなるのでしょうか?
 今回は、ジェネリック医薬品についてのお話です。

■ ジェネリック医薬品とは

 ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、新薬の独占的販売期間(有効性・安
全性を検証する再審査機関及び特許期間)が終了した後に発売される、新薬と同
じ有効成分で効能・効果、用法・用量が同一であり、新薬に比べて低価格な医薬
品のことを指します。
 業界用語かもしれませんが、以前は後発医薬品は「ゾロ品」と呼ばれていまし
た。しかし欧米で医薬品の処方の際に、有効成分の一般名(generic name)が使
われることが多いため、「ジェネリック」という言葉が使われるようになってき
ました。

 特許の存続期間は出願から20年で、医薬品の場合はさらに最大5年間の延長が
認められています。その間は特許の出願者(通常、新薬を研究開発した製薬メー
カー)が独占的に製造・販売できるため、その間はジェネリック医薬品は製造・
販売が認められていません。
 新薬の研究開発には、新規化学物質が見出されてから、動物実験、人での臨床
試験などを経て、厚生労働省の審査なども終了し、販売されるまでは約10年もの
年月を要するため、新薬が発売されてから特許が切れるまでの期間は残り10年ほ
どであることが多くなります。

 ジェネリック医薬品は新薬に比べて、研究開発に要する期間も費用も少なく済
むため、低価格での販売が可能となっています。医療用医薬品が販売されるため
には、「薬価」という国(厚生労働省)が決める公定価格に収載される必要があ
り、この収載は現在、年に一度7月に行われています。
 初めて薬価に収載されるジェネリック医薬品は、新薬の薬価に0.7を乗じたも
のとされています。既に他のメーカーのジェネリック医薬品が収載されている場
合は、さらに安い価格になっていきます。
 ですから、全てのお薬にジェネリック品があるわけではありませんし、薬価が
5〜7割も安くなるジェネリック医薬品は、元となる医薬品(先発品)が発売され
てからの年数がかなり経過し、ジェネリックの種類がとてもたくさん出てきてい
る医薬品に限定されている、ということになります。

 では、最近ジェネリック医薬品が大きく推奨されてきているのはなぜなのでし
ょうか?
 −−−それは年々膨らむばかりの医療費を抑制する一つの手段になり得ると国
が判断したからと言えます。日本では諸外国に比べ、ジェネリック医薬品の使用
割合が非常に低く、全体の1割くらいと言われています。そこでもっとジェネリ
ック品を推奨することにより、薬剤費が安くなれば、結果的に医療費が抑制され
るという考えなのです。
 
 医療費には診療報酬、調剤報酬というような規定があり、2年毎に改定されて
いるのですが、今年4月の改定では、処方箋の様式に「後発品への変更可」とい
う項目欄が追加されました。この欄に医師のサインと印があれば、ジェネリック
医薬品のあるものは、その一覧から各薬品の薬学的説明や値段の違いなどの説明
を受け、ご希望のジェネリック品に変更することが可能です。
 ただし現状では、ジェネリック品を取り扱う薬の問屋さんが限られていること
もあり、必ずしもご希望の薬品がすぐお取り寄せできるわけではありません。
 しかし、今後医療機関を受診して処方箋を受け取られる際は、ぜひ後発品につ
いての項目を見つけてみてください。そしてお時間のある方は、薬局でジェネリ
ック品についてお尋ねになってみるのもいいかもしれません。

■ 先発品とジェネリック品の価格比較

 では、実際に例をあげて先発品とジェネリック品の価格を比較してみましょう。
 ここでは、風邪から急性気管支炎を生じた患者さんに処方されたお薬例で比較
してみます。

 処方1.PL顆粒 1回1g      1日3回 4日分 (計12g)
     ダーゼン10mg  1回1錠 1日3回 4日分 (計120mg)
     ムコソルバン15mg 1回1錠 1日3回 4日分 (計180mg)

   2.濃厚ブロチンコデイン液 1回2ml 1日3回 4日分(計24ml)
   
   3.イソジンガーグル7%    30ml
     (1日3〜4回うがいする)

 先発品     PL顆粒(12g)       → 82.8円
 ジェネリック  トーワチーム顆粒(12mg) → 76.8円

 先発品     ダーゼン10mg(120mg)   → 318円
 ジェネリック  ヒシターゼ錠10mg(120mg) → 76.8円

 先発品     ムコソルバン錠15mg(180mg)→ 296.4円
 ジェネリック  アンキソール錠15mg(180mg)→ 76.8円

 先発品     濃厚ブロチンコデイン液(24ml)→ 112.8円
 ジェネリック  サリパラ・コデイン液 (24ml)→ 93.6円

 先発品     イソジンガーグル7%(30ml) → 108円
 ジェネリック  ポピドンガーグル7%(30ml) →  69円

先発品合計 : 918円   
 ジェネリック合計 : 393円

 上記合計額だけを見ると、かなりの差に感じるかもしれませんが、実際に私た
ちが負担する金額で考えると、自己負担が保険の3割だとした場合、先発品は
275.4円、ジェネリック品は117.9円となり、これ以外に薬局で支払う金額には、
調剤技術料、薬学管理料などが加わってきますので、実際に払う金額で考えると
期待するほどのディスカウントにはなっていないのが実情です。

 また、ジェネリック医薬品は、先発品と同じ有効成分と言っても、厳密にはま
ったく同一の成分ではありませんので、お薬の効果や吸収性が必ずしも同等では
ないのではないか、と指摘する専門家もいらっしゃいます。
 
 今後、わが国でのジェネリック医薬品がどのような位置づけになっていくのか、
まだ不透明な部分がありますが、私たちにはジェネリックを選ぶ権利があるとい
うことも頭の片隅においていただければ、と思います。


2006年6月1日(木曜日)

性格の表と裏

夫の横暴に耐えかねるという31歳の女性A子さんがクリニックに見えた。
夫は8歳年上の39歳。建築関係の自営をしている。よく働き、金銭的に
彼女を心配させたことはない。酒やタバコも飲まないまじめな人だが、
A子さんにきびしいところがある。
A子さんには軽いうつ病がある。病気が始まると無理ができないし、家事なども
手抜きになってしまう。けれど働き者でまじめな夫にはそれが許しがたいことで
あるらしい。そしてA子さんにとっても、頑固でまじめな夫の仕打ちが耐えられない
というのである。

私は、彼女たち夫婦がどうやって結びついたかについた聞いてみた。また彼のどこに
惹かれたのかについても聞いた。
お父さんを早くに亡くしたA子さんは 8歳も年上の彼のやり手な面に
「頼りがい」を感じたという。妻には生活の心配をさせず、オレについてこい、
と言わんばかりの夫をたのもしく思ったことであろう。

けれど、結婚してからだんだん、彼の横暴で融通のきかない、きまじめな面が
鼻についてきたという。

私は、夫の長所と夫の短所は裏表だということを話した。紙に裏表があるように、
人間にも必ず裏と表がある。それは表裏一体となって、どちらかだけはがすというこ

は不可能だ。

反対に夫の優しさに惹かれて結婚した女性がいる。彼女はほどなく、夫のたよりない
無責任なところが気になりだすだろう。

どんな性格にも必ず裏と表がある。
ときには、夫や妻や子どもたちの長所をあげ、それに必ずくっついている短所のこと

考えてみよう。
短所だけが別にあるのではないことを知った上で。


2006年5月31日(水曜日)

水虫

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■ 水虫
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春先から夏場にかけて、高温でジメジメしてくると勢いを増す水虫・・・。水虫
の原因である「白癬菌」(=カビの一種)は温度15度以上、湿度70%以上が大好
きなのです。そこで皆さんご存知のとおり、一日中靴を履いている働き盛りの年
代に多かったのですが、最近はブーツを履く若い女性や、家庭内感染によりこど
もも増えてきたというデータも!今回はこれから勢いを増す「水虫」についての
お話です。

 医療機関のデータによると、日本の水虫患者は約2500万人。そのうち足水虫は
1280万人、爪水虫が326万人、足と爪両方が864万人とのこと。また、水虫は家庭
内感染が多く、水虫患者の45%は、同居家族にも水虫があるとの集計も。バスマ
ット、スリッパ、じゅうたん、畳、床など、普段から清潔を心がけたいものです。

■ 水虫の原因、白癬菌とは

 皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つの層と汗腺、皮脂腺、毛などの付
属器官で構成されています。表皮の一番上にある「角質層」は死んだ細胞の集ま
りでケラチンというタンパク質でできています。角質は約1ヶ月で垢となっては
がれおち、このサイクルが俗に言う新陳代謝(turn over)です。
 白癬菌をはじめとするカビの仲間はケラチンが大好きで栄養源とするため、皮
膚に白癬菌がくっつくと角質層にもぐりこんで住みつきます。人の皮膚の角質層
は、他は1mmもないのに、足の裏は数mmもあるため、水虫のすみかにするには最
適!!
 しかし角質は1ヶ月ごとに新しくなるので、正しく治療すれば水虫は1ヶ月で治
るはずなのです。「水虫は治らない」と思いこんでいる人には朗報ですよ(^-^)
※角質層の奥深いところに白癬菌が潜んでいることもあるため、完全に白癬菌を
 取り除くためには、少なくとも3ヶ月くらいは薬を継続するべきと言われてい
 ます。


髪の毛に悩む男性の皆さん

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■ 髪の毛に悩む男性の皆さん
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最近始まった、「800万人の髪の毛に悩む男性の皆さん、うす毛や抜け毛は病院で
治療できる時代です。・・・AGAは病院へ。」というテレビCM、もうご覧になられた
でしょうか?
 AGAと入った白いTシャツを着た無数の男性たちが、一歩ずつ診察室まで進んでいく
異様な姿に、一体何のCMだろう?と目を留めた方も多いことと思います。

 AGAとは、Androgenetic Alopeciaの略で、20代〜30代に発生する若年性脱毛症、
40代〜50代に発生する壮年性脱毛症を合わせて「男性型脱毛症」と呼んでいます。
進行にはパターンがあり、前額部か頭頂部のいずれから薄くなっていきます。
 このような状態が進行してきたとき、これまでは、市販されている毛髪用剤や、
かつら(ウィッグ)や増毛を試される方が主流だったのではないでしょうか?
 
 そこで、今回はAGAのCMでご紹介されている、病院での治療法を中心に、最近の
育毛剤事情をお知らせしたいと思います。
 ※参照: AGA news http://aga-news.jp/

■ 脱毛の原因は様々です

 髪の毛の量は、だいたい10万本ぐらいあると言われています。髪の毛1本1本には
寿命があり、毛が発育する成長期(2〜6年)、成長が止まり毛球の退縮が始まる
退行期(2週間)と、毛球が完全に退化する休止期(3〜4ヶ月)があります。
休止期に入った毛はやがて抜け落ち、そのあとに新しい毛が生えてきます。
これをヘアサイクルと呼び、男性は通常2〜5年、女性は通常4〜6年と言われいます。
そして、健康な髪でも1日に70〜100本が自然に抜け、同じくらい生えてきます。

 ※毛球とは毛根の最下部のふくらんだ部分で、髪の活力がわかると言われています

 AGAの方は、通常2〜6年あるはずの成長期が、数ヶ月〜1年と短くなってしまい、
髪の毛が長く太く成長する前に抜けてしまいます。抜け毛が細く短い人や、前頭
部や頭頂部などに薄毛が目立つようになってきた方は、AGAの症状と考えられま
す。また、AGAは進行性で、何もしないでいると髪の毛の数は減り続け、徐々に
薄くなっていきます。そのためAGAは早めのケアが大切です。 しかし、AGA以外
にも様々な脱毛症がありますので、他の脱毛症との区別も重要です。


PET検査

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■ PET(ペット、陽電子放射断層撮影)
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がんの早期発見の方法として、近年とても注目されている検査法にPET(ペッ
ト、陽電子放射断層撮影)があります。「全身の小さながんが一度に発見できる、
がん検診の切り札」と期待されているのですが、先日、国立がんセンター(東
京)の内部調査結果として、PETによるがん検診では85%のがんが見落とされて
いた、とのショッキングな報道がありました。
 そこで今回は、PETとはどのような検査方法なのかについてご紹介します。

■ 今回の報道の内容について

 国立がんセンター(東京)内の「がん予防・検診研究センター」では、2004年
2月から1年間に、超音波、CT、血液などの検査に加えPET検査を受けた約3000
人のうち、150人にがんが見つかりました。
 ところが、この150人のうち、PETでがんがあると判定された人は15%の23人の
みで、残りの85%は、他の方法でがんが発見されており、PETでは検出できなか
ったとのことでした。
 PETは、一度で全身の検診を行える点や、薬剤注射以外に痛みや不快感がほと
んどない点、そして「小さながんを見つけやすい※」とされていた点から、大き
な期待が寄せられてきましたが、一石を投じるデータとなりました。

※多くのがんは、1cmの大きさになるまでに10〜20年ほどかかるそうです。
 1cmを超えると急速に増大しますが、それより小さながんは比較的完治すると
言われているため、がんの早期発見はとても重要です。

■ PETとは

 PETとは、Positron Emission Tomography(陽電子放射断層撮影)の略語で、
放射性物質が含まれた薬剤を注射し、がんに集まる放射線を検出してがんを発見
する装置です。

□ PET診断の原理

 脳や身体を働かせるための大切なエネルギー源として「ブドウ糖」があります。
通常、人間の血液に0.1%含まれており、その場合は血糖と呼ばれます。人間は
食物に含まれるでんぷんなどの糖質を、体内でブドウ糖に変えます。このブドウ
糖は血液の流れを介して細胞に運ばれ、脳や身体を正常に動かすための大切なエ
ネルギー源となります。

 活動の活発ながん細胞は正常な細胞に比べ、このブドウ糖を3〜8倍も多く取り
込みます。そこで、ブドウ糖の一部にPositron(陽電子)としてフッ素をつけた
FDGという薬剤を体内に注射すると、がん細胞など活動の活発なところへ集まり
ます。そこでFDGから放出される放射線をPETカメラで画像化することで、がんの
有無や位置、進行度などを調べるというものです。

 X線CT検査(コンピュータ断層撮影)やMRI検査(磁気共鳴診断法)は、がんの
組織と正常な組織の形の違いを画像化し、形や大きさでがんを見つける検査であ
るのに対し、PET検査は細胞の状態や働きを調べるものです。そのため比較的小
さながんの発見に優れているとされてきました。

 また、CTやMRIが従来、がんになる可能性の高い臓器に対し行われていたのに
対し、PETは一回で全身を検査できるという優れた特徴があるため、予期しない
ところに生じた転移や再発を早期に発見できる検査法として期待されています。

□ PETの長所

 ・一回で全身の検査を行える(前述のとおり)

 ・安全性が高い
  検査に使用される薬剤(FDG)はブドウ糖の一種であり、半減期(薬の体内
  での濃度が半分に減るまでの時間)も110分ととても短いため、身体への負
  担や副作用の心配がありません。

 ・痛みや不快感がほとんどない
  検査前の1食分は絶食で、FDGを静脈注射したあと、薬剤が全身にまわるまで
  約1時間ほど待ちます。その後はポジトロンカメラのベッドに寝て安静にし
  ている間に、30〜60分程度かけて撮影を行います。

 ・他の検査と併用して、腫瘍の性質(良性or悪性)や悪性度の判定が可能
  CTなどでは良性か悪性か判断がつかない場合や、病期(悪性度)などをPET
  では判定できます。

 ・抗がん剤や放射線治療の効果を判定できる場合がある
  がん細胞の活動性の低下などを診断できるため、治療効果を判定でき、次の
  段階の治療方針を早く決めることができる場合があります。

□ PETの短所

 ・画像がピントがずれた写真のように写るため、PET画像だけで評価できない
  場合が多い(CTやMRIなどとセットで行われることが望ましい)

 ・検査に使用する薬剤FDGは、がんだけでなく、炎症巣にも集まる性質がある
  ため、がんとの区別が難しい場合がある

 ・PET検査では、診断が難しいがんがある
 (胃がん、腎がん、尿管がん、膀胱がん、、前立腺がん、肝細胞がん、胆道が
  ん、白血病などの原発巣の診断の場合は不向き。原発ではなく遠隔転移や再
  発の場合は、有効な場合もある)

 ・保険適用できるかどうかが難しい場合があり、自由診療では高額の費用がか
  かる

 PETは1994年ごろから使われ始め、現在は100近くの医療機関が導入し、がん検
診に多く使われているようですが、この検査の特徴から考えても、単独での判定
には向かず、CTやMRIなどの併用が必要な方法と言えそうです。
 実際、医療機関ではいくつかの方法を組み合わせてのがん検診となっているよ
うですので、今回の報道自体にはあまり過敏になる必要はないのかな、と思いま
した。
 いずれにしても、今後のさらなる情報を待ちたいところですね。


薬疹

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■ 薬疹
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先日、実家の父がピロリ菌の除菌療法として抗菌剤2剤、胃酸を抑える薬1剤
を1日2回1週間服用した後、薬疹(全身性のひどい皮疹)と微熱、目の障害な
どが出て入院、大変なことになりました。薬疹とは、体内に入った薬剤に対する
過剰反応(多くはアレルギー反応)の結果生じる皮膚症状のことで、多くの人が
平気であっても、時に薬疹を経験する方がいます。父の場合は抗菌剤のひとつと
の相性が悪かったようでした。
 おかげさまで2週間ほどでほぼ完治しましたが、「医薬品副作用被害救済制
度」のことを思い出して父に勧めたところ、診療してくださった医師たちも病院
自体も制度のことをよくご存知なく、手続きがとても大変だったそうです。

 「医薬品副作用被害救済制度」とは、医薬品(病院、診療所で投薬されたもの
の他に薬局で購入したものも含まれます。)を適正に使用したにもかかわらず副
作用による一定レベル以上の健康被害が生じた場合に、医療費等の給付を行い、
これにより被害者の救済を図ろうという制度です。私の父の場合は、薬疹などの
治療のために支払った医療費(健康保険負担分を引いた自己負担分、入院費も含
みます。)に加え、医療手当として36000円ほどが給付されました。
 医薬品は、有効性と安全性のバランスの上に成り立っていますので、私たちは
時に重篤な副作用に苦しむことに遭遇するかもしれません。皆さんにもぜひ患者
側に保障されているこの制度のことを知っていただけたら、と思い、今回はこの
制度について、ご紹介させていただきます。

(参考:医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度)       
    http://www.pmda.go.jp/help/

まず、簡単に「薬疹」についてご説明します。

■ 薬疹とは

 体内に入った薬剤に対する過剰反応の結果生じた皮膚症状のことで、塗り薬に
かぶれた場合は、薬疹ではなく「接触性皮膚炎」です。
 頻度的には非常に低いのですが、薬が体内に入ったあと、免疫細胞がその薬に
対してアレルギーを起こしてしまうことがあります(感作)。この感作が成立す
るまでには一般的に10日間ほどかかります。感作が成立したあと再び原因となる
薬剤が入ると、早ければ数分、遅くとも数日のうちに免疫細胞が活動してアレル
ギー反応を起こします。この反応はじんま疹様の場合や、時にショック状態(血
圧が下がったり、意識を失うなど=アナフィラキシーショック)、また遅延型で
は全身に紅斑が出る場合などがあります(斑点のタイプは様々です)。
 父の場合は、1週間の投薬が終了した翌日、お腹や背中に発症、その後数日間
はどんどん患部が拡がり顔も真っ赤に腫れ上がりました。

 診断の際には、他の皮膚症状を伴うウイルス感染症(はしか、水痘、風疹な
ど)との鑑別を行い、最近〜現在の投薬歴の中から疑わしい薬を探ります。原因
や合併症の有無を調べるため、血液検査で白血球数や肝機能、CRP(C反応性たん
ぱく=炎症の度合い)、ウイルス抗体価などを調べます。薬疹の原因を判定する
検査は症状が完治したあとに行います。

■ 薬疹の治療

 まず、疑わしい薬剤を中止し、ステロイド薬の全身投与(注射や内服)や肝臓
の代謝を促進する薬を行うのが一般的です。症状が軽い場合は疑わしい薬を中止
するのみや、抗アレルギー薬の内服とステロイド薬の軟膏を塗る程度の治療です
むこともあります。
 ステロイド薬の全身投与の場合は、血糖値の上昇、血圧の上昇、消化管への影
響などが現れることもあり、経過観察には特に注意が必要です。ステロイド薬は
経過をみながら徐々に減量していきます(リバウンド防止)ので、医師の指示に
従い自己判断で中止することのないようにします。

□ 医薬品副作用被害救済制度について

■ 救済の対象となる健康被害

 昭和55年5月1日以降に医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副
作用による疾病(入院を必要とする程度のもの。)、障害(日常生活が著しく制
限される程度の状態のもの。)及び死亡です。

 「医薬品」とは厚生労働大臣の許可を受けている医薬品を指し、「適正な使
用」とは、原則として医薬品の容器あるいは添付文書に記載されている用法・用
量及び使用上の注意に従って使用されることを指しています。

 ※副作用による疾病、障害であっても、以下の場合はこの制度の給付対象にな
  りません。
 1.法定予防接種を受けたことによるものである場合。
  (別の公的救済制度があります。任意の予防接種を受けたことによるもので
   ある場合は本制度の対象となります。)

 2.医薬品の製造業者や販売業者などによる損害賠償の責任が明らかな場合。

 3.救命のためやむを得ず通常の使用量を超えて医薬品を使用したことによる
健康被害で、その発生が予め認識されていた等の場合。

4.がんその他の特殊疾病に使用される医薬品で厚生労働大臣の指定するもの
  (対象除外医薬品:抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤など、人体に直接使用されな
   いものや、薬理作用のないもの等副作用被害発現の可能性が考えられない
   医薬品、動物用医薬品、製造専用医薬品、体外診断用医薬品など )等に
   よる場合。

 5.医薬品の副作用のうち軽度な健康被害や医薬品の不適正な使用によるもの
である場合。

この他にも請求期限等一定の条件があります。

■ 請求の方法

 副作用による健康被害を受けた本人や家族が請求書などの必要な書類を添えて、
医薬品機構に直接行うことになっています。(制度を解説したパンフレットや請
求用紙は、医薬品機構が無料で送付してくれます。)

 医薬品機構に提出された請求書、診断書等をもとに、その健康被害が医薬品の
副作用によるものであるかどうかなどについて、厚生労働省の薬事・食品衛生審
議会(副作用被害判定部会)で審議され、厚労働生大臣の判定結果をもとに医薬
品機構において救済給付の支給の可否が決定されます。

 詳細は医薬品機構の相談窓口がありますので、該当する事案のある方はご相談
されるとよいと思います。

■ 副作用救済給付の種類

 副作用救済給付の種類は、以下のとおりです。

1.医療費:
  医薬品の副作用による疾病の治療<注1>に要した費用(ただし、健康保険
  等による給付の額を差し引いた自己負担分。)を実費補償するものです。
 (健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例による。)

2.医療手当:
  医薬品の副作用による疾病の治療<注1>に伴う医療費以外の費用の負担に
  着目して給付されるものです。定額。

3.障害年金:
  医薬品の副作用により一定程度の障害の状態<注2>にある18歳以上の人の
  生活補償等を目的として給付されるものです。定額。

4.障害児養育年金:
  医薬品の副作用により一定程度の障害の状態<注2>にある18歳未満の人を
  養育する人に対して給付されるものです。定額。

5.遺族年金:
  生計維持者が医薬品の副作用により死亡した場合に、その遺族の生活の立て
  直し等を目的として給付されるものです。定額。(最高10年間を限度とす   る。)

6.遺族一時金:
  生計維持者以外の人が医薬品の副作用により死亡した場合に、その遺族に対
  する見舞等を目的として給付されるものです。定額。

7.葬祭料:
  医薬品の副作用により死亡した人の葬祭を行うことに伴う出費に着目して給
  付されるものです。定額。

 <注1>
  医療費及び医療手当の給付の対象となるのは、疾病が入院治療を必要とする
  程度である場合の治療とされており、一定の重篤度が給付の要件になってい
  ます。
 <注2>
  障害の状態とは、症状が固定し治療の効果が期待できない状態又は症状が固
  定しないまま副作用による疾病について初めて治療を受けた日から1年6ヶ
  月を経過した後の状態をいいます。障害の状態が一定の重篤度(政令で定め
  る1級又は2級)に達している場合に障害年金及び障害児養育年金の支給の
  対象となります。

※給付の対象となるのは、医薬品の副作用による疾病に関するものであって、原
 疾患に関するものではありませんので、ご注意下さい。
 医薬品の副作用であるかどうか判断が付きかねる場合も請求することは可能で
 す。給付の内容から明らかなように、「障害年金と障害児養育年金」、「遺族
 年金と遺族一時金」をそれぞれ同時に請求することはできません。

それぞれの給付額や請求の期限、請求方法その他詳細は「医薬品医療機器総合機
構 医薬品副作用被害救済制度」http://www.pmda.go.jp/help/  をご参照くだ
さい。電話相談窓口もありますので、もしものときはぜひご相談なさってみてく
ださい。


インスリン

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■ インスリン
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例年になく厳しい寒さが続いていますが、恙無く新年をお迎えのことと存
じます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、昨年度のグッドデザイン大賞に糖尿病治療で使用するインスリン注
射用針「ナノパス33」が選ばれました。現在糖尿病でインスリン自己注射を
行っている患者さんは、国内だけでも60万人もいらっしゃるそうです。注射
は誰もが嫌なことですが、それを一日に数回という生活を続けるとなると尚
更のこと。この世界一細い33G(0.2mm)の注射針は従来の 31Gより20%も細
くなったそうですから、本当に素晴らしい製品だと思います。
 では、このナノパス33が利用されるインスリンとはどういう物質なのでし
ょうか。

■ インスリンとは

 インスリンとは、胃のちょうど裏側にある「すい臓」という臓器で作られ
る、体の中では唯一血糖を下げる働きを持つホルモンで、食後に血糖が上が
らないように、調節したり、血液中のブドウ糖を体の細胞に送り込んで、活
動するためのエネルギーに変えたり、エネルギーを蓄えるために脂肪やグリ
コーゲンに変える、というとても大切な働きをしています。インスリンが不
足したり、うまく作用しないと、ブドウ糖が細胞に取り込まれなくなって、
血液中のブドウ糖が使えなくなり血糖値が下がらなくなってしまいます。ま
た、筋肉や内臓にエネルギーが運ばれなくなるため、全身のエネルギーが足
りなくなってしまいます。
 こうしてインスリンの不足や作用不足で持続的に高血糖の状態が続く病態
が糖尿病です。

■ 糖尿病とは

インスリン作用不足の原因により、主に以下の2つに分類されています。
(妊娠糖尿病や、その他の特定の疾患などによる糖尿病もあります。)

*1型糖尿病
 すい臓のインスリンを作り出す細胞が破壊されてしまい、インスリン分泌
が全くないタイプです。ウイルス感染などがきっかけで起こる自己免疫異常
(本来は体外から体に侵入しようとする病原菌などを無力化するための免疫
機能が、自分の体に対して作用してしまう)が原因と考えられています。小
児や若年層に突発的に発病することが多いのですが、成人になってから徐々
に破壊されて発病することもあります。

*2型糖尿病
 インスリン分泌が低下はしているもののゼロではなく、いくらかは分泌さ
れているタイプです。遺伝素因が関与しながら、過食・運動不足などによる
肥満やストレスなどの生活要因が加わって発病することが多く、日本では圧
倒的にこのタイプが多く、生活習慣病の一つでもあります。また、すい臓内
のインスリンを作る細胞の感受性が低下した「インスリン抵抗性」の状態に
より、作用が不足している場合もあります。

■ 糖尿病の診断

 糖尿病かどうかは、慢性的に高血糖状態にあるかどうかを、血糖検査で確
認することで診断されます。血糖値は食前か食後か、ストレスのある状況か
否かなどによって絶えず変化しています。このため一回の検査でははっきり
と診断できませんので、確定診断には別の日にもう一度検査を受ける必要が
あります。

 「糖尿病の診断」は、糖尿病の病型(1型、2型など)に関わらず、
  空腹時の血糖値が 126mg/dl 以上、
  食後の血糖値(随時血糖値)が 200mg/dl 以上 の時に行われます。

 「異常なしの判定」は、
  空腹時血糖値が 110mg/dl 未満、
  随時血糖値 が 140mg/dl 未満 の時に行われます。

 この両者の中間の検査値を示した場合には、経口ブドウ糖負荷試験(75グ
ラム法)を行い、糖尿病型か、境界型か、正常型かを判定します。
 この他、血糖と併せて血中インスリンを検査したり、合併症の検査など、
必要に応じて様々な検査法があります。

 ※経口ブドウ糖負荷試験(75グラム法)とは
  75g のブドウ糖を飲み、時間を追いながら血糖値を調べる検査です。血
  糖値の変動から判定します。

■ 糖尿病の治療法

 糖尿病のタイプや個々の状態で様々ですが、食事療法、運動療法を中心に
行い、薬物療法では経口血糖降下薬やインスリン注射を使用します。特に1
型糖尿病の方は、体内でインスリンが作られないため必ずインスリン注射が
必要になります。今回はインスリン製剤についてご紹介します。

 インスリンはブドウ糖をエネルギー源として利用する際などに必要な他、
血糖を下降させる働きをしています。インスリンは健常人の体内では、血糖
値を一定に保つための基礎分泌と、食事などによる血糖上昇時に速やかに分
泌される追加分泌とがあります。

 インスリン製剤は、効果の発現までに要する時間や持続時間により、
  超速効型、速効型、中間型、遅効型、超遅効型、持続型、
  混合製剤(作用の速いものと遅いものを混ぜた製剤)
 などのタイプに分類されています。

 1型糖尿病の方は、自分で血糖値を測定しながらライフスタイルに合わせ
てインスリン製剤のタイプを選択し、食事の前や就寝前などにそれぞれ適し
た製剤を注入します。

痛みを伴う注射を自分でとなると怖いイメージもありますが、今回のナノパ
ス33はもちろん、他にも主流となっている注射針は、一般の予防接種の針と
比べると随分細く、扱いになれれば小学生のお子さんでも自己注射が可能だ
そうです。

毎日頻回の注射が必要な患者さん達にとって、素晴らしい技術革新と言えま
すね。今後も様々な分野での医療技術の進展が楽しみです。


タミフル

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■ タミフル
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 先月、インフルエンザの治療薬として期待されている「タミフル」を服用し
た患者2人が、飲んで間もなく行動に異常をきたし、1人は車道に走り出て大
型トラックにはねられ死亡、もう1人はマンションの9階から転落死していた
という衝撃の報道がありました。この他にも10代の女性が服用後2日目に窓
から飛び降りようとして母親に止められた例などがあり、アメリカ食品医薬品
局(FDA)の発表によると、日本の16歳以下の服用者12人が死亡してい
たそうです。一般に、インフルエンザでは他の感染症に比べて、高熱や頭痛、
腰痛や、全身のだるさなどの症状が重くなりがちなため、病状の一部である可
能性や他の薬剤の影響も考えられ、タミフルの副作用とは断定されていません
が、厚生労働省は昨年6月に「医薬品・医療用具等安全性情報」を出し注意を
呼びかけています。また添付文書の副作用に異常行動も盛り込まれています。

 このような異常行動が、本当にタミフルの副作用なのか、今後の慎重な分
析・報道が期待されるところですが、タミフルとはどのような薬なのかまとめ
てみたいと思います。

■ タミフルとは

 タミフルの成分は、「リン酸オセルタミビル」。スイス・ロシュ社が開発し
た製品で、インフルエンザ様症状が発現してから48時間以内に投与を開始す
ると、ウイルスの増殖を妨げ、熱がある期間を1日程度縮める効果があります。
タミフルを大人が服用する場合には、オセルタミビルとして1回75mg(1カ
プセル)を1日2回、5日間経口投与します。小児が服用する場合には医師が
処方した分量(ドライシロップ剤、体重により換算)を1日2回、5日間経口
投与します。

 また、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共
同生活者に下記の対象者がいる場合には、カプセル製剤を1日1回、予防使用
することが認められています(7〜10日間継続投与すること)。
※この場合は保険適用にはならず、全額自己負担です。また健康成人と13歳
 未満の小児には、予防使用は認められていません。
 (1)高齢者(65歳以上)
 (2)慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
 (3)代謝性疾患患者(糖尿病等)
 (4)腎機能障害患者
 予防使用する場合には、インフルエンザ感染患者に接触後48時間以内に投
与を開始すること、となっています。
 ただし、インフルエンザの予防の基本はワクチン療法であり、本剤の予防使
用はワクチン療法に置き換わるものではない、と本剤の添付文書にも記載され
ています。

■ 日本はタミフル消費大国

 先月11月23日の東京新聞などの報道によると、タミフルの日本人消費は
世界一で、過去5年間に日本でタミフルの処方を受けた人は約2400万人、
処方量は世界の77%を占めたそうです。

 欧米でのインフルエンザ治療が依然として、安静、水分補給、解熱剤の投与
が中心なのに比べ、日本では2000年ごろまではインフルエンザ脳症の死亡
例が多発し、インフルエンザは怖いというイメージが出来てしまっている、と
見る専門家もいます。さらに日本国内では保険制度や乳幼児医療費補助制度が
行き届いているため、薬価がとても高い(1カプセル約364円)にもかかわ
らず、タミフル信仰が先行していると言われています。

 タミフルは発症後48時間以内に服用しなければ効果がない点や、インフル
エンザウイルスを殺すわけではなく、増殖を抑制するため罹病期間を1〜2日
間短縮する程度にすぎない、とも言えるのですが、今回の異常行動の報道をき
っかけに、タミフルの使用の仕方も考え直す時期に来ているのかもしれません。

■ インフルエンザは怖い? インフルエンザ脳炎・脳症とは

「脳炎」とは、脳組織の炎症に起因する症候群の名称であり、脳組織の病原
体の検出により確定されます。一方、脳炎の診断に合致する症状があるにもか
かわらず、脳組織での炎症がないと考えられる症例もあり、この場合は一般的
に「脳症」という診断名が用いられます。ここでは、大きく「脳炎・脳症」と
まとめて考えます。

 厚生省(現:厚生労働省)の研究班「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学
的究」の報告では、1999年1月1日から3月31日までに、小児で217
例(そのうちインフルエンザの確定診断がついている例が129例)の脳炎・
脳症と考えられる症例があり、5歳までに全体の82.5%が含まれていたそ
うです。
217例のうち、完全に回復したものが86例、後遺症の残ったものが56例、
現在経過観察中が17例、死亡したものが58例とのことです。

 インフルエンザの発症から脳炎・脳症の症状を呈するまでの期間は、平均
1.4日と非常に短く、高熱、痙攣(何度も繰り返したり、10分以上続くこ
とも)とともに意識障害が急速に進行します。脳細胞に炎症を起こす病気なの
で、脳がむくむ脳浮腫も見られます。脳がむくむと頭蓋骨の中の圧力が高まり、
高まりすぎると「脳ヘルニア」という延髄への障害も起こり、予後が非常に悪
くなります。

 低年齢の乳幼児では、意識障害に早期に気づいたり、熱性痙攣と異なる痙攣
を見極めるのは難しいと思いますが、万が一脳炎・脳症を起こした場合、脳へ
の影響を小さくするには、けいれんや脳の腫れを抑える治療を一刻も早く受け
る必要があるので、経過の観察がとても大切です。

 
 インフルエンザが脳炎・脳症を起こす原因は、まだ分かっていませんが、
 ・ インフルエンザウイルスが、ウイルス血症を介して、中枢神経系に侵入
   して脳症を起こす。
 ・ ウイルスを抑えるために体が出す物質(サイトカイン類)が過剰に出て、
   脳を壊す。
などの見方が提唱されています。

また、脳炎・脳症が幼児に多いのは、繰り返しインフルエンザに感染して免
疫がある大人に比べ、子供は抵抗力が不十分なことなどが考えられます。

もうひとつ、高熱の際に使用されている一部の解熱剤が脳炎・脳症の引き金
になっているのではないかという指摘もあります。それは、インフルエンザに
よる脳炎・脳症が問題になっているのは、日本だけであること。そして、解熱
効果の高いメフェナム酸やジクロフェナクナトリウムなど、強力な解熱剤が小
児にも使われているのも、やはり日本だけであることからです。

厚生省(現:厚生労働省)研究班による調査結果(1999年1〜3月に報
告されたインフルエンザによる脳炎・脳症のうち分析可能な202人;0〜5
歳80%、1歳最多)では、脳炎・脳症患者の65%が解熱剤を使用しており、
そのうち、メフェナム酸(商品名ポンタールなど)を使った患者の死亡率は
67%、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレンなど)では52%。解
熱剤を使わなかった患者の死亡率は25%。これを元に統計学的に処理すると、
死亡の危険度は、使わなかった場合に比べ、それぞれ4.6倍、3.1倍高い
と報告されています。

 そして2000年11月には、厚生省(現:厚生労働省)は「インフルエン
ザ脳炎・脳症患者に対しジクロフェナクナトリウムの投与を禁忌とする」と発
表しました。これは、上記の研究に続き、2000年1〜3月の脳炎・脳症発
症例91例の検討においても、ジクロフェナクナトリウムを使用していた患者
に有意に死亡率が高いという結果が出たためです。

 この2種類の解熱剤は、より高熱で使われる傾向がありますが、炎症を抑え
る力も強いため、ウイルスと戦う力を弱めると言われています。熱自体で脳が
侵されることはないので、小児への安易な解熱剤の使用は避ける(使う際も作
用のマイルドなアセトアミノフェンやイブプロフェンにする)よう、普段から
注意が必要です。

 しかし、インフルエンザ脳炎・脳症では、解熱剤を使用しない例でも死亡例
が出ていますし、42度以上の発熱例では解熱剤の有無に関わらず、ほぼ全例
が死亡の転帰をとると言われていますので、因果関係が証明されたわけではあ
りません。

■ タミフル神話は危険?

 発売以来、インフルエンザの特効薬としてあっという間にその名をとどろか
せたタミフル。実際、私の周りでもインフルエンザシーズンが近づくたびに、
「タミフルがあるからワクチンはしなくても平気でしょ?」という声もちらほ
ら。今回の異常行動の報道は「くすりはリスク」という言葉を思い出すきっか
けにはなったのでしょうが、それでも自分たちは大丈夫、という意識が強いよ
うな気がします。鳥インフルエンザや新型インフルエンザの登場懸念から世界
各国でタミフルの備蓄競争が繰り広げられていたり、個人輸入のタミフルが
オークションなどで高値で売買されている、という情報も相次いでいます。

 しかし、インフルエンザに罹っても、あまりに早期にタミフルを飲むと、感
染したインフルエンザウイルスに対する免疫が十分に出来なくなる恐れがある
そうです。また、全国的にタミフルを使いすぎていると、かつて騒がれた抗生
物質の使いすぎによる耐性菌出現のように、タミフル耐性インフルエンザウイ
ルスが出現してくる(既に出現も!)という怖い情報もあります。

 よって、予防目的の内服は、さらに耐性タイプの新型ウイルスをつくり出す
ことになるとも考えられ、安易な使用は危険だと言えそうです。

 今後のタミフル情報には目が離せませんね。
 まもなくクリスマスや年末年始と楽しいイベントの続く時期、皆さんお体に
気をつけてお過ごしください。少し早いですが、どうぞよいお年をお迎えくだ
さい。


インフルエンザの予防法

━━ MENU ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ インフルエンザの予防法
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
また今年もインフルエンザの流行が心配な季節になりましたね。昨年来、鳥
インフルエンザ感染が拡大したり、世界保健機関(WHO)が「人から人へ感染す
る新型インフルエンザが大流行する危険性が高まっている」と発表するなど、
心配な情報が跡を絶ちません。有効な治療薬として期待されている抗ウイルス
剤「タミフル」や「リレンザ」が各国で備蓄され生産が追いつかない、とも言
われています。

 そこで、改めてインフルエンザの予防法について考えてみたいと思います。

■ インフルエンザの種類

 インフルエンザウイルスにはA・B・Cの3型があり、主にA型、B型が流行
的な広がりを見せています。ウイルスの表面膜は2種類の棘のような突起(H、
Nと略されています)で覆われており、これらは様々な組み合わせをつくり、
ヒトに限らず色々な動物にも分布しています。現在、ヒトではA香港型(H3
N2)とAソ連型(H1N1)、B型の3種のウイルスが世界中で共通した流
行株となっています。

 インフルエンザの感染が防げるかどうかは、個々人がこの突起に対する抗体
を持っているかどうかで決まりますが、流行するたびにウイルスの型が変化
(変異)しているため、その変異が強くなれば同じ型のインフルエンザに以前
感染し免疫のある人でも、再度感染を受けることになります。

 毎年インフルエンザが流行しつづけるのはこのためで、さらにウイルスが突
然変異を起こし、違う型に取って代わったりすると驚異的な規模での大流行を
引き起こしかねません。

■ インフルエンザワクチン

 インフルエンザの予防対策として最も期待されるのがインフルエンザワクチ
ンの予防接種と言われています。この予防接種には否定的な意見もありますが、
ここでは「インフルエンザワクチン」とは何かについてご説明します。

 ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがありますが、現在のインフルエ
ンザワクチンは不活化ワクチンです。

 生ワクチンは生きた病原体の毒性を弱めたもので、その病気にかかったのに
近い免疫(抗体)を作ろうとするものですので、できる免疫は強くなりますが、
副作用の頻度はやや多めになります。不活化ワクチンは病原体を殺し、免疫を
作るのに必要な成分を取り出して、毒性をなくしてつくったものです。生きた
病原体ではないので副作用の頻度は減りますが、病原体は体の中で増殖しませ
んので、何回か接種する必要がありますし、できる免疫は弱くなります。

 インフルエンザワクチンでは、1〜4週間の間隔をあけて、2回接種するこ
とになっています(この間隔は、1〜2週間よりも3〜4週間の方が効果的です)。
また、免疫効果は約5ヵ月と言われるので、毎年インフルエンザの流行前(11
月頃)に受けるのが良いとされています。

 ワクチンは、毎年WHOおよび日本国内の流行情報などに基づいて、次シー
ズンのワクチン製造株が選定されています。インフルエンザウイルスは流行す
るたびにその型が変異しますし、同一シーズンでも時と場所によって型が異な
ることが多いと言われているので、予測はなかなか難しいようです。

 現在はA香港型(H3N2)とAソ連型(H1N1)、B型の3種のウイル
スが共通した流行株となっているので、原則としてインフルエンザワクチンは
この3種類の混合ワクチンとなっています。

 昨冬の予防接種のワクチン効果は残念ながら約27%と、今一つだったこと
が、先ごろ、日本臨床内科医会の調査で分かりました。効果(有効率)は年に
よって変動しており、昨冬の場合は、流行を予測して作ったワクチンの型と、
実際に流行したウイルスの型がずれた可能性があるようです。このようなデー
タもあることをふまえながら、予防接種を受けるかどうかを判断していただけ
ればと思います。

■ 新しいインフルエンザワクチン「経鼻ワクチン」

 厚生労働省は今年の3月下旬、現在のインフルエンザワクチンより効果の高
い、鼻に噴霧する経鼻ワクチンの開発に乗り出すと発表しました。前述したよ
うに、現在の不活化ワクチンには効果に限界がありますが、この経鼻ワクチン
は、ウイルスを弱毒化した生ワクチンで、ウイルスの変異への対応力が高く、
感染の場となる気管支やのどの粘膜に達して直接作用するため、とても期待さ
れています。

 このワクチンは米国ではFluMistとして既に認可されていますが、生の(生
きている)ウイルスであるため、まれにではありますが、接種後に体内で突然
変異し、強い病原性を発揮する恐れ(副作用)も考えられます。

 厚生労働省は、この経鼻ワクチンについて、有効性や安全性を調べる研究班
を2006年度に発足させ、3〜5年後の実用化を目指しているそうです。

■ インフルエンザワクチン以外の予防法

 この時期「寒さと乾燥」で私たちの上気道粘膜の抵抗力は弱まりがちです。
一方、インフルエンザウイルスは、この「寒さと乾燥」が大好きです。
 他にも冬に活躍する風邪ウイルスはたくさんありますので、家族全員で自衛
策をとりましょう。

・ なるべく人混みには行かない
・ 外出後は、うがい、手洗い、洗顔などをする(ウイルスが付いた思われ
   る部分を洗う)
・ 室内の湿度を60〜70%に保つ
・ 睡眠や栄養を十分にとる。
(体力が落ちているとウイルス感染しやすいだけでなく、感染した後も治
   りにくくなります)

□ インフルエンザウイルスを1分で撃退できる新型マスク

 これまでは、マスクを着用しても完全にカゼやインフルエンザを予防するこ
とはできない、と言われていましたが、今年は画期的な助っ人が登場しそうで
す。それは、資生堂の子会社「エフティー資生堂」より今月中旬に発売される
予定の「ナノブロックウイルスカットマスク」。このマスクは、内蔵した「バ
イオ抗体フィルター」の抗体がインフルエンザウイルスに結合反応し、ウイル
スの活動を抑え込む。そしてフィルターが捕捉したウイルスの99・9%につ
いて、感染力を1分以内に奪って体内への侵入を防ぐとのこと。感染者のせき
やくしゃみによるウイルスの拡散も防止してくれ、マスク1枚で約500回分
のせきが放出するウイルスをカットできるのだそうだ。

□ うがいの効用

 先ごろ、水でうがいすると、しない場合に比べ風邪になるのを4割近く抑え
る効果があるとの調査結果が京都大の川村孝教授(内科学・疫学)らのまとめ
により明らかになりました。

 川村教授らは、18−65歳の男女計約400人に実験に参加してもらい、
(1)1日3回以上、水うがいをする(2)1日3回以上、ヨード液を使って
うがいする(3)うがいしない−の3グループに分けて2003年12月から
04年3月にかけ、1人について2カ月追跡調査。
 その結果、1カ月に100人のうち何人が風邪になったかに換算すると、そ
れぞれ17・0人、23・6人、26・4人だった。水うがいすると、しない
場合に比べ風邪は36%抑えられた。というもの。

 水道水に含まれる微量の塩素の殺菌効果や、口をすすぎ病原体を吐き出した
可能性が考えられるとのことで、うがいの大切さを再認識できますが、ヨード
液を使ったうがい薬では、予防効果が確認できないとは意外な結果です。この
点についてはさらに研究が進められることと思いますが、ヨード液には消毒効
果があるものの、風邪の予防には粘膜細胞への作用なども重要なのではないか
と推測されているようです。

 また、「鼻うがい」も風邪やインフルエンザの予防策として推奨されていま
す(私はまだやってみたことがありませんが^^;)。人の呼吸は80%以上が
「鼻呼吸」です。風邪やインフルエンザのウイルスも鼻粘膜について体内に侵
入していく確率が非常に高いわけです。通常のうがいでは口腔内と咽頭の一部
だけしかすすげないのですが、鼻うがいであればさらにウイルスたちをスッキ
リ洗い流すことができるそうなのです。

 鼻うがいの詳細についてはここでは省略しますが、慣れないとなかなか難し
いようです。最近では、鼻うがいができる「鼻洗浄器」も販売されていますの
で、これらを試してみるのもよいかもしれません。

 尚、うがいがまだ上手にできない小さなお子様などには、のどを乾燥させな
いように、水分を多目にとって粘膜細胞を潤すことでも少なからず効果がある
ようです。加湿器などとともにぜひ心がけてみてください。

簡単に、いくつかの予防法をご紹介しましたが、今年はインフルエンザなどの
大流行が来ないことを切に願いたいものですね。皆さんご健康に気をつけてお
すごしください!


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